ORAL Information 2021
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図6 糖尿病患者さんにコンクールFを習慣化させることで、糖尿病マーカーに改善傾向が見られた。RCはRed Complexと称される歯周病原性の高い悪玉菌3種のうち存在している菌種数を示す「口腔全身連関学共同研究講座」の今後の展望産学連携のあるべき姿 2021年1月、産学連携の実態を把握する文部科学省の調査結果が公表され、全国の大学や専門学校などが2019年度に民間企業から受け入れた研究資金は、過去最高の約1,185億円となった。企業と大学の研究者が連携する「共同研究講座」が増え、前回調査では第1位だった大阪大学は東京大学に次ぐ第2位となっている。ウエルテック社とともに設置した「口腔全身連関学共同研究講座」は今後どのように展開していくのだろうか。仲野氏の思い描く共同研究講座の展望と産学連携のあるべき姿はこうだ。 「私たちが提唱している『口腔全身連関学』は、小児歯科学や口腔感染症学のように学問として体系づけられていません。しかし5年後、10年後に体系づけられた学問となっているという願いを込めて、ウエルテック社には共同研究講座を支援していただいているような気がします」 共同研究講座の契約は2年半ということである。もし、つぎなる課題を解決して国民の口腔の健康と全身の健康に寄与するというお互いの想いが一致すれば、延長することはあるのだろか。仲野氏は含みをもたせながら笑顔を見せた。 「ウエルテック社は単に利益だけを追求しているわけではないと実感しています。人生100年時代のなかで歯科の果たす役割が注目され、『口腔全身連関学』という学問を追究したいという私たちの考えに賛同していただいたからこそ、共同研究講座を一緒に設置されたと思っています。引き続き、ウエルテック社と連携しながら、長期的な視点を共有してさまざまな課題を解決し、社会貢献につなげたいと思います。今後は、心疾患や脳血管疾患などの全身疾患への口腔清掃の効果についても研究していきたいと考えています」 今回の取材をとおして、これからの時代に求められる産学連携の姿についてあらためて考えさせられた。大学の研究開発費が削減されるなか、専門家の長期的な視点を共有し、そこから出された課題を解決するために企業が財政面でサポートする。そのお互いの姿勢こそが、これからの産学連携という企業と専門家のあるべきカタチなのかもしれない。参考文献 1. Nomura R,Inaba H,Matayoshi S,Yoshida S,Matsumi Y,Matsumoto-Nakano M,Nakano K.Inhibitory e ect of a mouth rinse formulated with chlorhexidine gluconate,ethanol,and green tea extract against major oral bacterial species.J Oral Sci 2020;62(2):206-211.仲野和彦 なかの・かずひこ大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(小児歯科学教室)教授1996 年、大阪大学歯学部卒業。2002年、同大学博士(歯学)。2014 年、同大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(小児歯科学教室)教授。同大学大学院歯学研究科副研究科長、日本小児歯科学会常務理事(学術委員長)も務める。野村良太 のむら・りょうた大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(小児歯科学教室)准教授2002年、大阪大学歯学部卒業。2006年、同大学博士(歯学)。2011年、同大学歯学部附属病院講師。2015年、同大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(小児歯科学教室)准教授。日本小児歯科学会代議員も務める。12108640M9菌種(RC3)1M7菌種(RC2)2M7菌種(RC1)3M3菌種(RC0)HbA1c正常範囲76540M8菌種(RC3)HbA1c1M7菌種(RC2)2M6菌種(RC2)3M3菌種(RC0)正常範囲投薬減量→52歳女性53歳男性QUINT ORAL INFORMATIONクイント・オーラル・インフォメーションP R7

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