デンタルアドクロニクル 2016
6/172

「デンタルホーム」が歯科医療のあり方を変えるか? 「メディカルホーム」というコンセプトが米国小児学会で提唱されたのは、1960年代でした。そこでは、障害や慢性疾患をもつ小児患者の診療録統一管理の重要性を基に発祥した理想的医療のコンセプト、医療理念が論じられました。上記の考えに基づいて、米国小児歯科学会は、2000年代初頭に「デンタルホーム」のコンセプトを発表いたしました。 小児患者とその保護者、歯科医師とそのスタッフ、その他多方面にわたる関係者の継続的、包括的、組織的な切れ目のない歯科医療のあり方が提示されています。それを要約すると以下のようになります。①ガイドラインに基づいた、予防から救急処置にいたる包括的な口腔ケア②口腔衛生そして口腔病リスクの総合的査定③リスク判定結果に適し、かつ患者と保護者のニーズにあった予防プログラム④患者年齢に対応したさまざまな口腔成長発達問題(例:生歯熱、指しゃぶり)に関する予備知識⑤歯科外傷の対応⑥正しい口腔ケアそして管理についての患者およびその家族への教育⑦食事指導⑧患者のニーズに基づいた専門医の紹介⑨成人歯科医療への取り次ぎが提供されるべきである『小児歯科・デンタルホームYEARBOOK2016』「米国におけるデンタルホーム(DentalHome)の取り組みと展望」飯田博子より 今、私が特にここで取り上げていきたいとことは、この「デンタルホーム」の理念を全国民のなかに取り上げていくことであります。あらゆる疾病のなかで、予防がもっとも顕著に効果を表すのは、歯科における二大疾患のカリエスとぺリオです。これらは、①〜③をしっかりと守ることによって回避することができます。しかし、今や口腔疾患の多様性は、医科、歯科の連携を含め、多角的な視点に迫られています。 小児歯科から始まった予防を、8020の実現、さらには、「オーラル・フレイルの予防」という新しい考え方にも発展させていくことが待たれるのではないでしょうか。今や高齢者にとっては、歯科疾患の治療はもとより、軽微な機能低下といわれる、滑舌の衰え、食べこぼし、わずかなむせ、口の乾き、嚥下の機能の衰え――にも真剣に取り組む時がきています。小児歯科からオーラル・フレイルをカバーする「デンタルホーム」の考え方を取り入れるときが到来しています。クインテッセンス出版株式会社会長 佐々木一高42016年、日本の歯科界は……

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です