デンタルアドクロニクル 2016
67/172

65歯科医療の状況をそれぞれの立場から考察するれわれの実験でも確認されています。 なお、S-PRGフィラー溶出液はP. gingivalisなどに対しても抑制効果を発揮することがわかっており、洗口剤として歯周病予防に使用することも期待されています。安田 ありがとうございます。今里先生にはまず初めに全体像を俯瞰していただきました。では、つづいて杉山先生お願いいたします。現代の予防臨床―海外との比較をふまえて杉山 私の医院の目標は「20歳でのFilling Free」です。先日伺った新潟県ではきちんと統計を取っていて、何と17歳でのカリエスフリーの患者が53%にもなっていることを聞いて驚いていたところ、デンマークのオドー市ではやはり過半数がカリエスフリーで、しかもデンマークの歯科保健システムのプログラム参加率は98%でした(Fejerskov O,Nyvad B,Kidd E・eds.Dental Caries:The Disease and its Clinical Management,3rd Edition.New Jersey:Wiley-Blackwell,2015)。もちろん国の方針はさまざまですから一概にはいえませんが、私がORCA(European Organization for Caries Research)でお会いした先生の話では、電話をするなり、町で会えば声をかけるなどをするだけでほぼ100%の参加率ですから、さらに驚かされました。では私の医院の状況はどうかということをこのところ発表してきたわけですが、定期的に来院する患者さんのカリエスフリー率は56%です。人数は少ないですが、私の診療所でもオドー市と同じような取り組みをすれば、数値はさらに改善するかもしれない、今までやってきたことは間違っていなかったと思っているところです。メインテナンスの患者数の推移をみても(図S1-1)だいぶ増加してきまして、年齢別にみると50代、60代、そして70代の占める割合がとくに増加傾向にあります。この理由には、私が開業している地域は団地でして、賃貸・分譲両方ですが住民が高齢化してきているという背景があります.一方、10代、20代はやや減少です。65歳以上の患者の残存歯を2004年と2014年で比較しますと、19.6歯から20.9歯に増加していまして、メインテナンスシステムの充実とともにメインテナンスの患者数と同様に増加してきたことが伺えます。私が開業したころは、高齢者の患者さんは多数歯欠損の人が多い時代でしたが、いまは高齢の患者さんでもデータ同様に残存歯は多くなり、私自身の診療体系が変わってきていることを実感しています。欠損補綴治療主体の体系から高齢の患者さんの口腔ケア主体に変わってきたわけです。 図S1-2に90歳以上の患者さんが図S1-1 年間のメインテナンス患者数(年代別推移:2000年~2014年)。図S1-2① 初診時77歳、男性の口腔内。図S1-2② 現在95歳(2015年3月)。図S1-2③ 90歳時に記念撮影。3000250020001500100050002000年2001年2002年2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年10才以下10代20代30代40代50代60代70代80代90代100才以上

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 67

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です