デンタルアドクロニクル 2016
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67歯科医療の状況をそれぞれの立場から考察するの困難な指導は行わない」など、それぞれの対応法も考えています。また来院のきっかけも、「乳歯の萌出」、「歯磨きの方法についての相談」、「う蝕治療やう蝕予防処置の相談」、「乳幼児健診での指摘(学校歯科検診含む)」、「フッ化物塗布希望」、「永久歯の萌出や歯並び」、「外傷(歯または軟組織)」などさまざまですが、引率してきた保護者へのケアも重要と考えています。具体的には母親の悩みを理解してあげるということです。歯ブラシの必要性、食べ物や飲み物の与え方、育児の環境について不安要素は多くあります。「母乳や哺乳瓶が原因となる小児特有のう蝕」、「無理やりブラッシングすることで歯磨きが嫌いになってしまうのではないか」といったことまで考えてしまう場合もあるようです。でも、共通の願いは「どうにかしてう蝕を予防したい!」ですから、保護者の不安を一緒に考え、最善の提案をしていくことで、保護者との信頼関係が構築でき、子どもが通院しやすい状況をつくることにも注意を払っています。 具体的な小児歯科の治療ですが、今回は予防処置と修復処置について述べてみたいと思います。最近は混合歯列期でもパノラマエックス線写真が撮れるようになり、永久歯の埋伏や先天性欠如歯の有無も確認しやすくなり、必要に応じて他科との相談のもと、治療を行うことも容易です。軟組織疾患や融合歯の治療を行うこともあります。う蝕については、低年齢児(3歳未満)に対して一般的にはサホライドで対応することが多いようですが、私の場合、変色することが気になるのでフッ素バーニッシュを塗布しながら経過観察を行い、その後必要に応じて、「PRGバリアコート」を塗布することも増えてきました(図S2-1)。充填処置を施す場合には「ビューティフィル ネクスト」、ボンディング材は前歯部に「フルオロボンドⅡ」、臼歯部には「フルオロボンド シェイクワン」をよく使っています。裂溝部などには「ビューティシーラント」も多用しています(図S2-2)。中心結節の補強にはフロアブルレジン(ハイフロータイプ)、結節部や切歯口蓋部裂溝にはシーラント、最後方臼歯部頬側から遠心部の不潔域には「PRGバリアコート」といった具合です。さらに、矯正を行っている患児にも可撤式矯正装置によって生ずる不潔域(クラスプ周囲および床と接する部位)や固定式矯正装置によって生ずる不潔域(ブラケットの周囲やワイヤーと接する部位)に積極的に「PRGバリアコート」を塗布しています(図S2-3)。その後はフッ化物の塗布(1.23%APF:酸性フッ素リン酸)を行いますが、並行してブラッシングおよびフロスの指導、さらには摂食および生活習慣の指導も行っています。 以上が私の日常臨床像ですが、最後にこれからの小児歯科について考えてみます。われわれ小児歯科医からみますと、子どもの立場をわかってあげて、優しく接し、診療に取り組むということになりますが、実はこれは大人でも同じですよね。こういった対応をしていけば、歯科はよい方向に進むと信じています。また、処置内容によっては歯科衛生士が行うことが可能なものが多くあります。たとえばシーラントやTBI、口腔衛生指導、フッ化物塗布などが増えて、歯科医師の負担は大幅に減図S2-1①~③ PRGバリアコートの塗布。図S2-3①、② 矯正治療患者への予防処置。図S2-2 裂溝部などにはシーラントも多用。

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