デンタルアドクロニクル 2016
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歯科界発展のために活動する学術団体JAIDJAID(Japanese Academy for International Dentistry)は、2012年3月11日に結成された、若い学会です。USC・UCLA・NYUなどの海外CEコースを修了した歯科医師が中心となって設立されました。海外研修で得た知識や経験を日々の臨床に役立て、国際標準の歯科医師を育成することや、アメリカの学会の日本でのアフェリエート学会としての役割を果たし、①卒後研修を通じて歯科臨床技能を高める②アメリカはじめ海外との歯科交流の窓口となる③歯科医師の社会的・経済的成功をサポートすることを目的としています。2012年・2013年と海外講師を招いた学術大会や、各種の主催講習会・セミナーを活発に開催してきました。今後は、衛生士向けセミナー等も拡充し、海外CEコース修了者だけではなく、今後海外CEコースを受講希望者まで、入会の間口を広げ、日本の歯科界における重要な役割を担う団体となるよう、会員一同研鑽しています。88JAID特集  健康寿命延伸にインプラントはどう役立つのか【鈴木】『オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズVol.2術後管理編』でも1ページ目から健康寿命延伸について述べましたが、厚生労働省の調査によると、64歳のときに総入れ歯の人が5%に満たないにもかかわらず、74歳になったときに4割近くが総入れ歯になっているというデータがあります。 そこで、歯がある時とない時でなにが違うかを、われわれはリサーチしました。 その中で重要だと思われたのは“認知症”です。たとえば、岡山大学の森田教授はラットを使用して咬み合わせとアルツハイマーの関係について実験しています。咬み合わせ異常のラットでは正常な咬み合わせのラットに比べて、アルツハイマーの原因因子であるアミロイドβが2~2.5倍多く蓄積され、その後咬み合わせを改善するとアミロイドβの量は正常値に戻るという結果が出ています。 また、2010年に厚生労働省の研究班は、愛知県の4,425人を対象に4年間の疫学調査を行った結果、歯がない人のほうが1.9倍認知症になりやすいという研究結果を発表しています。 これらの研究結果より、歯を失うことや咬めなくなることが、“認知症発症のリスク”や“脳の認知機能低下を招く可能性”となると考えられます。そしてインプラントにより咬合を回復することが、それらを予防して健康寿命を延伸することができるのです また“誤嚥性肺炎”も重要です。75歳以上の老人ホームで、直接死因の1位になっています。85歳以上になると、一般の人をすべて入れても誤嚥性肺炎が1位です。8020運動を達成された方は、誤嚥することが非常に少ないのです。というのも舌骨を固定して前上方に持ち上げるには、咬むことが必要なのです。 つまり、咬める歯がないと非常に飲み込みづらい。総入れ歯を装着している人と、同じく歯がなくて総入れ歯を入れていない人の比較では、総入れ歯を入れているだけでも、3倍誤嚥性肺炎を防げるということがわかっています。これは総入れ歯の話ですが、固定式のインプラントであれば、もっと有効になるであろうと思われます。【庄野】そういう具体的な健康面以外にも、口元に自信を持つと、女性だと化粧まで変わるくらい、みなさん自信を持つわけです。つまり、現在、歯がない者にとっては“咬める”、“健康”、“美容”の3つが兼ね備えられる方法では、インプラントがいちばんの近道ではないかと思います。 義歯でもたしかに咬むことはできるようになりますが、口輪筋の閉鎖がないと、総義歯は維持できないので、普通のスマイルラインは獲得できません。つまり総2015年10月に『オーラル・インプラント・リハビリテーション・シリーズVol.2術後管理編』が発売されて以降、歯学書籍専門書店シエン社の販売ランキングで長期間1位となるなど大好評を博している。今回は書籍のテーマのひとつでもある「インプラントが健康寿命延伸にどのように役立っているのか」について、監著・著者らに特別座談会として語ってもらった。      編集部

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