デンタルアドクロニクル 2017
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  全国民に歯科医療のメリットを  わかりやすくアピールするには?古谷野●患者さんのリテラシー、理解度を上げるという点で、1人ひとりのインフォームドコンセントの努力が大切になります。茂久田社長はメーカーのお立場から、患者さんに何を提供していきたいとお考えですか。茂久田●では、カタログそのものを通して患者さんに、歯科に関する正しい情報を提供したいと考えています。たとえば医科では大きな傷でも自己治癒力である程度治っていくのに対し、歯科では疾患がある程度進んでしまうと不可逆的で自然治癒しない点を患者さんはわかっておらず、医科と歯科を混同されていると感じます。 先生や歯科衛生士から患者さんへの説明時間を省いて治療に集中してほしいので、商品カタログがそのまま患者さん向けになるように工夫しています。  待合室で患者さんが読んで、その治療方法を受けてみたい、この器材を使ってほしいと要望されればベストですね。瀧野●私の医院では、初診患者の皆様へ、月に2回、「歯の健康教室」を開いて、スライドを交えて1時間お話をしています。これは皆さんにおすすめです。ハードルが高いとおっしゃる先生もいますが、各医院での啓発活動は、茂久田社長が先ほどおっしゃったようにカタログでの情報発信なども含めて大事なことだと感じています。古谷野●患者さんも能動的に治療に取り組むようになり、予防やメインテナンスの意識レベルも全然違ってくるでしょうね。岡口●歯科医師会や学会、スタディグループによる市民フォーラムが最近増えていますが、市民に対して歯科の現状や取り組みをわかりやすく伝えてあげることが大切だと思います。 たとえば米国で「エンドドンティストになろう」という人が多いのは、米国歯内療法学会が日頃からプロモーションをしているんですね。米国民はそれを目にする機会が多く、「エンドドンティストになりたい」と思う人が増える。日本ではそういう活動が少なかったように思います。中田●そうですね。昨年、自分たちのグループで歯科医師向けの書籍『エビデンスに基づいたペリオドンタルプラスティックサージェリー』(クインテッセンス出版、2016)を上梓したのですが、今後はそういった歯科治療の価値をわかってもらえるように、患者さん、市民に向けたアピールも大切になってくると思います。古谷野●日本補綴歯科学会でも学術大会開催時には必ず市民フォーラムや公開講座は開催しますが、集まっていただくのはなかなか難しく、いろいろな工夫が必要だと感じています。  1人ひとりのインフォームドコンセントの努力だけでなく、歯科界全体で国民に何か伝えられれば、それに越したことはありません。歯科バッシングがある一方で、歯科医療が国民に寄与している部分は非常に多いわけです。 たとえば、歯科医師の視点に立つと、私費がメインの海外と比べて日本の歯科治療費が安いのは事実ですが、裏を返して患者さんの視点に立てば、患者さんはその安い値段で治療をしてもらってきました。歯科疾患実態調査で6年ごとにすべてのデータが確実によくなっているのは明確ですから、それは国際比較のなかでも日本がとてもすばらしい結果を残している証拠です。 全体としての歯科医師がみんな努力してそれだけの結果は出しているという事実を、もっと全国民に伝える必要がありますね。瀧野 裕行京都府開業 タキノ歯科医院若いDrの成功体験を      が創る!2中田 光太郎京都府開業 中田歯科クリニック27

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