デンタルアドクロニクル 2017
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71CROSS TALK Part 2Shaping the Future of Estheticsザー方式という新しい硬化技術と、ピンポイントで硬化する材料、この2つを組み合わせることで、かなり適合精度が向上しました。山﨑 それは期待したいですね。 そうなると、デジタル化はさらに進みますよね。私の歯科医院もフルデジタルではなく、やはりセミデジタルです。それはなぜかというと、これまではフルデジタルの核となる3Dプリンターに問題があったからです。模型がないと不便ですからね。有川 先生がおっしゃるように、われわれも口腔内スキャナーが普及すれば、3Dプリンターの模型材は必ず必要になってくると考えています。山﨑 たとえばデジタル化がかなり進んでいる国もあると思うのですが、日本は歯科技工士のシステムがありますからね。フルデジタルになったとき、日本の場合は歯科技工士さんがやはり模型上で調整したいですから。あと模型があれば、時間ができたときにマージンを調整しようとか、あるいはグレーズをしようとか、そういうことができるのですが、模型がないとゴールまでいかなきゃならない。そうなるとちょっとつらいところもあるのですよね。 話を聞くと、かなり期待できそうですね。私も早く試してみたいです。有川 ありがとうございます。ナチュラルなグラデーションのマルチレイヤージルコニアは頭一つ抜けた存在有川 では次に、ジルコニアのお話をお聞きしたいと思います。もちろん先生がご存じのように、われわれはマルチレイヤーのジルコニアを出させていただいているのですが、このマルチレイヤーについて先生のご意見をいただけますでしょうか?山﨑 私は世界各国で講演をしたり、あるいは世界各国の有名メーカーさんの工場に行ったり、さまざまな意味でコンタクトが強いのですが、現在のジルコニアのマーケットにおいて、特にマルチレイヤーのブロックでは私はクラレノリタケデンタルが頭一つ抜けているなという気がします。 その理由は非常に単純なのですが、光の反射がすごく良いのです。3レイヤーなのですが、実際にはそれ以上のマルチカラーのカラーリングもできるし。敢えて希望を言えば、カラーのバリエーションはもうちょっと増やして欲しいとは思いますが。有川 現在、強度もあってSTMLの人気が高いのですが、この色数を16色まで増やすことが決まりました(17年1月発売)。山﨑 本音を言えば、スーパートランスルーセンシー(ST)、ウルトラトランスルーセンシー(UT)で、トランスルーセンシーはあまり変わらないと感じています。ではどこで選択するのかと言えば、強度の問題がとても大事なのですよ。こういうジルコニアを使う最大の理由は、やはり機能的に崩れない、壊れないところですから。そうなると、私もやはりSTMLを使いますよね。 私の場合、実際はもうちょっと捻って、表面の0.1mmか0.2mmくらいにわずかに粗目を付けて、そこにグレージングパウダーをつけています。そうするとエナメルカラーが浮き出てくるきれいな形になって、よりマルチレイヤーが引き立つのですよね。私は反対側に色調を合わせなければいけないようなケースでなければ前歯部も含め、全歯種に使っても良いのではないかと思います。有川 嬉しいですね。審美的な観点でも十分問題ないと。山﨑 他の材料も試しましたが、私は今のところ頭一つ抜けていると思っています。これはお世辞ではなく、本心からそう思いますね。有川 ありがとうございます。ちなみに、先生からこのマルチレイヤーの拡散性が非常に良いとおっしゃっていただいたわけですが、これは弊社の独自技術です。従来のジルコニアを重ねてしまうと、頬側面から見たときにどうしても線がしっかり出てきてしまうのですね。これが独自に開発したジルコニアを使用することで、本当に自然なグラデーションが出るわけです。山﨑 本当にナチュラルにグラデーションがでますね。やはり中で散乱してきれいに反射してこないと美しくは見えませんからね。有川 あとは、たとえば世界的、また国内でもそうなのですが、モノリシック系の歯冠修復材料としては、ジルコニアの他にもリチウム系シリケートガラスセラミックスがあると思うのですが、先生はどのように使いわけていらっしゃいますか?山﨑 私は実は基本的に100%近くジルコニアです。なぜかというと、リチウム系シリケートガラスセラミックスは酸に対して非常に弱い傾向があって、艶の消失など経年的にある程度問題が出てきてしまうと感じているからです。その辺りが解決されないかぎり、ちょっと難しいのではないかなと。もちろん使うときはあるのですが、頻度は非常に少ないです。有川 そうですか。そういう意味ではジルコニアの耐酸性、耐アルカリ性は非常に良いので、ご安心して使っていただけると思います。ありがとうございます。山﨑 クラレノリタケデンタルとは長いお付き合いがあるのですが、新製品の上市がある意味で非常に遅かったという印象があります。ですが、今日のお話を聞いていたら、後から出す分だけ良いものを作るという気概が感じられるし、それに期待したいですよね。現時点で、いわゆる審美的な治療に関するすべてのラインはもう完成されているので、後はそれぞれ個々のものに磨きをかけていただければ嬉しいです。有川 本日はありがとうございました。

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