デンタルアドクロニクル 2017
85/164

83超高齢社会での歯科医療の在り方を再考する一番だと思います。介護職の人たちにはありがたいことだそうです。たとえば第二大臼歯にクラスプがかかっている場合などは、職員さんが両側を外すのは大変だそうです。難しすぎてクラスプを切ってしまうこともあるようです。職員さんでも慣れない他人の口のなかに手を入れるのに抵抗があるなかで、クラスプを外すというのはかなり大変です。義歯の設計はシンプルにしていただく、バネもみやすくしていただくことで外しやすくなるのは職員さんにとってありがたいことのようです。また、根面う蝕やアンダーカットの多い部位は食物残渣がたくさん挟まっているので、ケアしてほしいといわれても難しいのが現状です。とくにブリッジに対して3Sの歯間ブラシを入れるということなどは職員さんにとってはとても難しいですし、ワイヤーが折れたりする事故も起きます。やはりシンプルで清掃しやすいことが施設の職員さんや在宅のヘルパーさんなどからは歓迎されます。患者さん自身もリウマチであったり、筋力低下や拘縮といったように、だんだん磨きづらくなっていきますから、シンプル・清掃しやすさが一番と日々感じています。安田 「診療室の延長線上にある診療」という言葉がよいですね。そこから摂食嚥下リハビリ・栄養にかかわる診療につながるというのもうなづけるところです。それでは最後に「口腔ケア期」について、歯科衛生士としての立場も含めまして本間先生に解説いただきたいと思います。DHが行う口腔衛生・機能管理の実際~これからのDHに求められる指導とケア~本間 私は歯科衛生士で愛仁歯科医院所属ですが、口腔機能支援センターさいわいと名乗って活動もしています。普段は愛仁歯科医院所属ですから、外来でメインテナンスの患者さんをお迎えしてケアを行っていますし、午後は基本的に在宅、施設、病院でケアや摂食機能のリハビリテーションを行っています。口腔機能支援センターさいわいは歯科医院の敷居が高い、もしくは歯科医師に相談することだろうか、といった口腔介護の相談、食事会、啓発活動などの地域高齢者支援のほか、勉強会や介護者向けセミナーなども行っています。 訪問診療のニーズは先ほど義歯の話もでていましたが、う蝕などの処置よりも現在は誤嚥性肺炎の問題もあって、口腔の衛生・機能管理にシフトしてきています。また、在宅での看取り、施設での看取りといったことが浸透してきているので、最後まで使う口腔内の管理が保険診療でも評価されるようになってきました(図13)。とくに「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」は先ほど須貝先生がおっしゃったように患者さんを最後までみることにつながるもので、非常に注目されています。 当院での訪問診療は在宅の場合、年齢層は若年者~100歳以上の患者さんが対象で、疾患・病期は脳性麻痺や重度発達遅滞~ターミナルまで大変幅広く色々な疾患が含まれます。在宅診療は、通院されていた患者さんが寝たきりであったり、家に閉じこもってしまったりといったケースがすごく多くて、特殊な難病というよりは最近まで通院されていたのに、何らかのきっかけで中断された患者さんが本当に多いのです。チーム構成はお母さんが子どもをみているといった家族介護から、難病を抱えている患者さんを担当する10以上の職種からなる多職種チームまでさまざまです。図14は脳腫瘍を患った患者さんで、ホルモン系の疾患を抱えており、左手は動かせず右手の動きも不自由な状態です。ケーキを食べているときの写真ですが、フォークのもち方が独特で、ひどい緊張と拘縮がありますが、セルフケアが可能で口腔内もきれいに管理されています。動かし方の加減で、ブラッシング圧が変わってしまうので、歯根面に知覚過敏が起きたりします。このような場合に「PRGバリアコート」、「ハイ-ボンドカルボセメント」(図15)が効果を発揮してくれます。早い時期に、痛くなるというよりは沁みてきた段階で先生に処置をしてもらっています。この患者さんは若いですし、歯科衛生士は月に4回訪問が可能ですので、医療保険範囲内図13 在宅での看取り、施設での看取りが浸透してきているので、口腔内の管理が保険診療でも評価されるようになった。図14a、b 脳腫瘍を患った患者。右手の動きが不自由な状態であり、フォークのもち方が独特で、ひどい緊張と拘縮がある。ただ、セルフケアが可能で口腔内もきれいに管理されている。ab〈訪問診療の考え方〉歯科診療・口腔ケアから=口腔の衛生・機能管理へ 新設病院:周術期口腔機能管理・NST1施設:口腔衛生管理、経口維持・移行加算、NST2在宅:在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所 居宅療養管理指導

元のページ 

page 85

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です