デンタルアドクロニクル 2018
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若いDrの自信と成功をが創る!33青島●私は、歯科医院の院長としては、まったくダメな教育者です。以前は勤務医や助手がいたのですが、今は3台あるデンタルチェアのうちの2台を交互に使用して、全部1人でやっています。宮崎●それを聞いて驚く読者は多いかもしれませんね。他人を信用できないタイプですね(笑)。青島●そうですね(笑)。本当は教えなければいけないし、スタッフができるようになれば楽になるのはわかっているのですが、その過程にストレスを感じてしまうんです。間違った考え方かもしれませんが、勤務医には給料を払って勤めてもらうわけですから、基本的には教わるのではなく、働いてもらわないといけないと思うんですね。土屋●その気持ちは、よくわかります。たとえば、院長の留守を守るのが勤務医であって、院長がいないと仕事ができないのでは困ります。見学しにきているわけではないですからね。勤務医は研修を受けに来るのとは基本的に違う。もちろんできないこともあると思いますが、勤務医には「院長の右腕になる」というようなスタンスでいてほしいですね。 その点、天川先生はすばらしかった。天川先生は私の歯科医院に7年くらい勤めたのですが、勤務医として長続きしたのは彼女と、もう1人の女性歯科医師の2人だけです。男性の歯科医師は長続きしなかった。なぜかというと、彼らは私のようになりたいと夢見て来るんですね。でも、なかなか叶わないから挫折するんです。ある時、天川先生が男性の後輩に「土屋賢司になろう宮崎●勉強会等での若手歯科医師の教育には、どの辺に重きを置かれていますか?土屋●私がそうであったように、勉強会では症例発表の評価が主要な教育になります。そこですごく重視するのは、フォーカスが合っているかです。どういうことかといえば、症例個々に異なる患者さんの重要な問題をきちんとテーマとして取り上げられているか否かということです。フォーカスがズレていて、自分が話したいこととか、かたよった趣味みたいな症例発表をされると僕は許さない。そこは見誤らないように徹底させます。天川●私も土屋先生に嫌というほど叱られ、叱られている人も見てきました。その結果身についたこととして、私も人の症例発表に対しては、やはりズレがないかということをとても注意しますね。 あと私が指導する側になったときに気をつけているのは、「ああしたら」「こうしたら」とはいいますが、その後に必ず「どうすべきかは、自分でもう一度考えてね」と言うことです。皆だれかの治療の真似をすることからはじめますが、その患者さんを実際に診ているのはその人自身なので、最終的には自分で考えて自分の診療スタイルを見つけるべきだとアドバイスします。宮崎●歯科治療は、患者さんとの関係があって初めて成り立つものですから、最終的には自分次第だということですね。 ところで、症例発表には、症例写真を撮ってきちんと記録しているかが重アドバイスがほしいからいつも写真にこだわろう要だと思うのですが、いかがでしょうか?岩野●その点、今はデジタルカメラで撮ってすぐに確認できるので、本当に便利な時代になりましたよね。土屋●私は、歯科医師人生の最初の20年くらいはフィルムカメラでしたが、その写真撮影は本当にシビアでした。ブレているとか、ピントが合っていないとか、きちんと撮影できているか否かが現像してみるまでわからない……。私も何回撮影に失敗して落ち込んだかわかりません。とくに術中のステップ写真なんかは、取り返しがつかない。だからさきほど「症例は一度きり、二度と返ってこないんだ!」と伊藤教授が仰ったという話は、本当によくわかります。 そういう時代を知る私からすれば、いまの若手歯科医師が写真を撮っていない、撮れないなんて本当に許せない!(笑) これだけ便利な時代なのだから、症例写真を撮るのは当たり前として、その質も高くあるべきですね。宮崎●青島先生は、カメラ器材とか写真撮影にこだわられている印象がありますが、症例写真の質という意味ではいかがですか?青島●たしかに講演などで、教育的な意味で歯の微細構造や歯周組織を見せる目的で、撮影道具にこだわり、試行錯誤して写真撮影することはありま症例写真はすなわち記録写真であり、歯科医師にとってのエビデンスにもなれば、患者さんの人生の大事な記録にもなる。これだけ便利な時代に、症例写真を撮っていない、撮れないというのは、患者さんの記録作成をあえてしないことにつながります(土屋)と思っても無理。私は土屋歯科の中の天川由美子になるわ」と言ったのですが、それ聞いてすごいなと思いましたね。そうして土屋歯科の中で欠かすことのできない、天川先生ならではの臨床を確立していったのです。

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