デンタルアドクロニクル 2018
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 95周年企画 特別座談会78はじめに鈴木 本日は、お集まりいただきありがとうございます。世の中は超高齢社会になって久しいですが、昨年の100歳以上の人口が、ついに67,000名を超えたそうです。100歳以上のお年寄りは、1963年には153名しかいなかったんですね。まさに「人生100年時代構想会議」が注目されるなど、これから100年生きることが普通になってくる時代がくるのでしょう。そういったなかで、「8020運動」も進んで、8020達成率は50%を超えました。しかし、義歯を必要とする患者さんはまだまだ多い。とくに有床義歯の場合は、施設や介護の場においては非常に必要とされています。 一方、歯科医師も学習しなければならないことが増えてきて、義歯にかける臨床実習の時間が減っている、また歯科技工の世界では、国家試験に排列がなくなってしまったという背景もあります。歯科医師は、審美の面では、義歯においても非常に注目している人が多いです。たとえば、歯肉をモディファイしたものに非常に興味があるようです。ところが人工歯に対しては、意外と無関心であるような気もします。義歯においては印象より咬合が重要なのは疑いのないことですが、その咬合を支える人工歯に対する無関心さ、たとえば、歯科医師は人工歯の選択も歯科技工所に任せるのが一般的な気もしますし、歯科技工所は経費の問題から人工歯を考えている場合が多いようです。今後、超高齢社会において義歯をどのように考えていくのか、人工歯の重要性に今回もう一度スポットを当てるためにお集まりいただきました。 まずメーカーの立場から株式会社松風の出口様、そして歯科技工士の立場から堤先生、歯科医師の立場から奥野先生、大学の教育の立場から松田先生の4名をお招きしました。松風人工歯の変遷鈴木 では、スタートとして、人工歯メーカーとしてはトップメーカーであります松風の出口様にお願いします。出口 ご紹介いただきました松風の出口と申します。現在、研究開発・技術・生産を担当しております。今回、松風の95周年記念にあたり、先生方にご参集いただきまして本当にありがとうございます。改めてお礼を申し上げます。 まずは「松風人工歯の変遷」をおさらいしたいと思います。 図D-1の年表は、松風人工歯の形態の変遷です。弊社は1922年にアナトーム型陶歯SAP(図D-2)の製造販売で創業し、陶歯の製造技術は1937年BioTeeth、1957年Real陶歯、1978年Bio─Aceへと継承してきました。2012年には創業の原点に立ち返り、実に34年ぶりとなる陶歯(臼歯)としてVeracia SA Porcelainを発売しています。一方、レジン歯は1945年に国産で初めてレジン歯を発売しています。1960年には、日本工業規格JIS T 6506レジン歯が制定され、翌年に国民健康保険制度の改正があり、レジン歯は急速に普及していきました。弊社は、1962年にReal Crownを発売し、これが爆発的に売れました。ちょうど工業界的にもアクリル材料が非常に汎用的になり、生産性も高くなっていたので、各メーカーとも1960年頃からレジン歯が多くなってきたのではないかと思います。しかし、レジン歯は「摩耗する」とか「もう少し審美性が高いものがほしい」という声が高まり、1986年に硬質レンジ歯のEndura Anterio、1988年にEndura Posterioを発売しました。現在に至るまでその知名度の高さはご存知のとおりです。2003年には、それまで総義歯用として開発してきた人工歯を部分床義歯での使用を主体として、天然歯に近似した審美性と機能的な形態で設計し、材質的にも新しい硬質レジン歯NC Veraciaを発売しました。時代の移り代わりとともに、歯科医療にも効率性と経済性が求められるようになり、2009年には技工効率や図D-2 SAP陶歯(写真提供:東京工業大学博物館)。1922 SAP 陶歯1962 松風 Real Crown1986 Endura Anterio1988 Endura Posterio2003 NC Veracia2009 Veacia SA1952 松風 レジン臼歯1945 レジン歯1937 Bio Teeth1952 Ace Teeth1957 松風 Real 陶歯1971 松風 リアルブレンド陶歯1978 松風 Bio‐Ace2018 Veracia SA Porcelain(前歯)2012 Veracia SA Porcelain(臼歯)レジン歯レジン歯陶歯陶歯硬質レジン歯硬質レジン歯図D-1 松風人工歯形態の変遷(年表)。

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