デンタルアドクロニクル 2018
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超高齢社会の“歯科訪問診療”を考える 2018  巻頭特集17た医学・歯学教育モデル・コア・カリキュラムは、医学・歯学共通の方針を「多様なニーズに対応できる医師・歯科医師の養成」として、国民から求められる倫理観、医療安全、チーム医療、地域包括ケア、健康長寿社会実現へのニーズに対応できる実践的臨床能力を有する人材の養成が目的とされている。特にプロフェッショナリズム、チーム医療の実践、さらに生涯にわたってともに学ぶ姿勢が強調されている。在宅歯科診療を推進するための歯科医師会の役割5)①エビデンスの蓄積 「健康長寿社会に寄与する歯科医療・口腔保健のエビデンス2015」(日本歯科医師会)等あるが、さらに評価研究事業等を継続しながら、エビデンスの構築に努める必要がある。 今後は、医療計画、医療介護総合確保方針に基づく新たな指標による調査が予定されており、さらに日本歯科医学会と連携した在宅歯科医療における困難性等の要因や医療技術の難易度についてのガイドラインの検討、これらの評価方法と評価システムなどへの取り組みが進められている。②歯科医師会の取り組み 地域や地区歯科医師会における多職種研修、行政との連携や協働、さらにそれぞれの歯科診療所の柔軟性ある歯科診療体制の整備と卒後研修の充実が重要である。 日本歯科医師会および40都道府県では、「歯の健康力推進歯科医師会等養成講習会」が開催されている。また、平成28年度までに44道府県で在宅歯科医療推進室が設置されている。行政や多職種と連携する歯科衛生士の存在 地域包括ケアシステムにおける歯科衛生士の役割として、在宅歯科医療、口腔機能回復、介護予防、食支援、口腔の疼痛管理等を目的とした口腔健康管理への取り組みが期待されている。厚労省の平成28年度衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、全国の就業歯科衛生士123,831人が勤務する場は、そのほとんどが歯科診療所で90.6%だが、病院は5.1%、介護保険施設は0.8%、行政は市区町村が1.6%、都道府県が0.1%と、それ以外ではきわめて少ない。 病院でNST、緩和ケアチーム、周術期における口腔機能管理など、所属する診療科を越えた入院患者へ対応、退院時カンファレンスに参加する。 地域では、退院時カンファレンスや地域ケア会議への参加、在宅歯科医療や介護保険施設における肺炎予防、インフルエンザ予防、認知機能低下予防に資する口腔健康管理、そしてミールラウンド等の栄養改善事業への参画が期待される。 行政や介護保険施設で実施する介護予防事業では、運動・栄養・口腔機能改善プログラムで理学療養士、言語聴覚士、管理栄養士と協働することで成果が上がっている。おわりに 平成28年歯科疾患実態調査では8020達成者は、51.2%と半数を超えた。しかし、在宅療養の高齢者が多くなると、たとえ歯が丈夫でも、口の手入れが難しくなる、飲み込みがうまくできなくなるといった困り事が増えてくる。 そこで口腔ケア、歯の治療も含めた口腔健康管理、摂食・咀嚼・嚥下など口腔機能の回復と低栄養を防止するための食支援が大切になる。またオーラルフレイルにより、滑舌が悪くなったり、食べこぼし・わずかなむせが起こったり、噛めない食品が増えるが、噛み合わせや食べ物を咀嚼する状態の良し悪しについての変化の兆しから、早期の予防や治療が肝要である。 健全な咀嚼機能と咬合の維持が、フレイル、オーラルフレイル、サルコペニアの予防に関わるという点からも、在宅歯科医療を通じての健康寿命延伸のための対応の広がりが期待される。DENTAL CLINICDENTAL CLINICDENTAL CLINIC歯科診療所●在宅における 診診連携の構築支援センター市区町村医療介護連携窓口地域包括支援センター病院(歯科設置無)歯科診療所医科診療所住まい地域歯科医師会慢性期病院回復期病院●支援センターへの 歯科医療機関歯科 衛生士の配置介護保険施設●要支援・要介護者 への歯科健診●デイサービスへの  訪問歯科診療病院と歯科●周術期口腔機能 管理の充実●病院の歯科医師 配置推進●退院時カンファ レンス等への歯科 の参画推進病診●病診の情報提供の 評価の充実歯科医師会と病院●歯科医師会の 機能強化●研修と連携の推進 と要件化●特に歯科無し病院 との連携推進CLINIC都道府県全国在宅医療会議在宅医療提供者学術関係者<職能団体>◆日本医師会 ◆日本歯科医師会◆日本薬剤師会 ◆日本看護協会◆日本理学療法士協会◆日本作業療法士協会◆日本介護支援専門員協会◆日本医療社会福祉協会<事業者団体>◆全日本病院協会 ◆日本慢性期医療協会◆全国老人保健施設協会◆全国在宅療養支援診療所連絡会◆全国在宅療養支援歯科診療所連絡会◆全国薬剤師・在宅療養支援連絡会◆日本訪問看護財団◆全国訪問看護事業協会◆在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク◆日本ホスピス・在宅ケア研究会<研究機関>◆国立長寿医療研究センター◆国立成育医療研究センター◆東京大学高齢社会総合研究機構◆国立社会保障・人口問題研究所<学会>◆日本在宅医療学会◆日本在宅医学会◆日本プライマリ・ケア連合学会◆日本老年医学会◆日本小児科学会◆日本在宅栄養管理学会厚生労働省市区町村◆日本在宅ケアアライアンス   ◆在宅医療推進会議行政図1 地域包括ケアシステムと歯科の課題(堀 憲郎「健康寿命の延伸に向けて 第3回社会保障勉強会」平成29年11月28日より〈一部改変〉)。図2 地域包括ケアシステムにおける在宅医療推進体制(「厚生労働省 第1回全国在宅医療会議 参考資料1」を一部改変)。参考文献1.‌(公社)日本歯科医師会,堀 憲郎.健康寿命の延伸に向けて,第3回社会保障勉強会資料.2017年11月28日.2.‌厚生労働省医政局地域医療計画課.厚生労働省 第1回全国在宅医療会議 参考資料1.2016年7月6日.3.‌恒石美登里.在宅歯科医療の状況. 2015年度版 現在を読む 歯科口腔保健・医療の基本情報.(公社)日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構.2016;33-34.4.‌(社)日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構.病院でのチーム医療における歯科の係りに関する調査.2011.5.‌(公社)日本歯科医師会,佐藤 保.厚生労働省 全国在宅医療ワーキンググループ報告資料.2017年3月1日.

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