デンタルアドクロニクル 2019
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15健康長寿社会の実現に向けて、それぞれのライフステージで歯科ができること  巻頭特集1乳歯の歯根を目指して生えてきますので、小児矯正を行うことで、成人矯正よりも自然観のある歯列になります。智史先生:私たちが目指すのは、患者さんの20年、30年先を見据えた治療です。1人ひとりにカウンセリングの時間を取り、ベストな治療を提案するのも「医療者としての義務」だと考えるからこそです。被せ物の治療時に矯正を併用したり、歯周治療やマイクロスコープを使った精密治療を組み合わせた治療も、私たちの医院であれば1フロアを上下するだけでインターディシプリナリーな治療を提供することができます。たとえば歯周病を治療してから矯正治療に移行し、歯列を整えたところにインプラントを埋入し補綴装置を装着するといったケースでは、すべての治療を終えるのに3~4年かかることも珍しくありません。2階と3階で同時進行している患者さんもたくさんいらっしゃいます。 3階ではおじいちゃんが私の治療を受け、2階の小児矯正にお孫さんが通ってくれているご家族もいます。歯科医院に通う習慣がついている患者さんの意識は必ず「予防」に向いていきます。小児矯正を受けた患者さんがう蝕の増える高校生、大学生になったときに、予防を根付かせておけば歯周病やう蝕の発症が少なくなります。その後、中高年を迎えて歯周病のリスクがあがってきたときには、歯列や咬合関係が良好でプラークコントロールも容易なので、歯の喪失が減ることは明らかです。まとめ竜一郎先生:健康寿命に寄与していると言っては大げさかもしれませんが、人生100年時代と言われている現在、1本でも多くの歯を残すことがわれわれの最優先事項です。当院がセラミック矯正を行わないのは、歯を削ったり抜髄したりと本来歯を残すはずの歯科医師がみすみす歯の寿命を縮めることに繋がりかねないからです。そのために私たちは小児矯正から始めています。大人になってからの抜歯矯正を避けられますし、小児のうちから咬合をしっかり作っておけば、将来的に歯を失う人たちを減らすことができます。それが8020運動の一環として、それぞれのライフステージで歯科が貢献できることだと考えています。 しかし、この理想も歯科医師だけでは限界があります。たとえば当院であれば、日本歯周病学会認定の歯科衛生士やMFT(口腔筋機能療法)を指導できる歯科衛生士がおり、当院の治療の一翼を担ってくれています。歯科医師には信頼できるスタッフが欠かせません。お互いに技術を研鑽し、いずれは「名古屋の高田兄弟歯科の周辺はなぜか自分の歯が残っている人が多い」と注目されるような、そんな地域貢献を目指しています。過蓋咬合をともなった永久歯スペース不足症例図1 患者は7歳女児。矯正精密検査の結果、過蓋咬合、永久歯スペース不足の問題点がみつかったため、バイオネーター、マルチブラケット装置を用いて治療を行う計画を立て、Ⅰ期治療をスタートさせた。図2 Ⅰ期治療が終了し、現在は保定装置を使用し永久歯スペースの確保と後継永久歯の萌出誘導を行っている。すべての歯が永久歯に交換完了したら再度精密検査を行い、Ⅱ期治療を行う予定。Ⅰ期治療を行ったことで、Ⅱ期治療において抜歯矯正を避けられる可能性がきわめて高くなった。

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