デンタルアドクロニクル 2019
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16巻頭特集1-6  健康長寿社会の実現に向けて、それぞれのライフステージで歯科ができることDr. Yoshiyuki Hagiwara萩原芳幸(はぎわら・よしゆき)日本大学歯学部診療教授。日本大学歯学部付属歯科病院歯科インプラント科科長。歯学博士。日本大学歯学部卒業。米国オハイオ州立大学歯学部インプラント部門客員研究員(1993〜1995年)を経て、2002年に日本大学歯学部付属歯科病院歯科インプラント科科長となり、2015年に同大診療教授に就任。診療と研究のかたわら、日本スポーツ協会(旧称:日本体育協会)公認スポーツデンティストとしてアスリートの歯の健康にも取り組む。噛めるお口と栄養摂取は表裏一体 現代の日本では、食と栄養に関する情報はテレビでもネットでも溢れんばかり。「〇〇が体にいい」と話題になると売り切れる店が続出するほど、こうした情報に皆さんとても敏感です。患者さんのなかにも、「〇〇がいいと聞いたので毎日食べてます」なんてかたもいらっしゃることでしょう。 ですがその一方、食べるために必要な「お口の健康」についてはどうでしょう? 食べ物と比べ、患者さんの意識にだいぶ温度差があると感じているのは私だけではないでしょう。 「よく噛めるかどうか」は十分な栄養を摂るために必須で、その比重はシニア世代になるにつれ大きくなっていきます。これはつまり、噛めるお口と栄養摂取はコインの表と裏――セットとして考えられるということでもあります。 歯科の仕事は「噛めるお口をつくること・維持すること」ですが、これからの時代、患者さんの健康長寿を考えるうえで、歯科からも栄養についての情報を伝えていく必要があります。噛めない患者さんには、歯科治療で噛めるお口を取り戻すことを勧め、噛めるようになった患者さんには、その後の栄養の摂り方を理解してもらうことが大切なのです。噛めない患者さんに不足しがちな栄養とは? 高齢になり歯を失い、それを補う歯科治療を受けていない患者さんは、食べられないものが徐々に増え、栄養摂取そのものに問題を抱えていくようになります。 噛めなくなると、全体的に食が細くなったり、やわらかいものを好んで食べるようになります。すると、食事全体に占めるおかゆやうどんなどのご飯類や麺類の比重が増えるほか、手軽に満足感を得られるお菓子の間食も増える傾向があります。その結果、糖質過多になりやすく、血糖値のコントロールが難しくなります。歯科の仕事は、噛めるお口の先にある栄養を見据えた時代へ平成25年「国民健康・栄養調査」噛めないと低栄養になりやすい204060801000(%)一部噛めないものがある79.720.3噛めないものが多い6732.9噛んで食べられない62.537.5何でも噛んで食べられる85%15%リスクが4倍に !低栄養傾向者低栄養の傾向のない人

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