デンタルアドクロニクル 2020
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130判を押したような矯正歯科治療において直面する限界に手を差し伸べる考え方と技術欧州やインドでの講演を経由して来日したというスティーンバーグ氏。講演開始にあたり、「自分の知見がシェアされることを少しも惜しまない。プレゼンテーションのどこを写真に撮ってメモしてもらっても構わない」と呼びかけた。自らの用いるシステムや手法の確実性が臨床結果により立証されており、それが世界中の歯科医師の利益になるという確信がうかがえる。まず氏は「標準的で判を押したような治療が適切な治療とは限らない」と語り、ビジョンがあってもそれを実現する適切な選択や方法がわからないと従来の治療に限界を感じる歯科医師に対し、ひとつの答えを示した。そして自分にとって、自分の理想や患者のニーズや現状にもっとも多様性をもって対応できるシステムがデイモンシステムであり、必要な歯の移動、不必要な歯の移動の回避をコントロールすることが可能であると賛辞を贈りつつ、その有効性について症例を交えて説明した。具体的な手法としては、臼歯部のビルドアップと“early elastic”(治療早期から緩徐な力で牽引するエラスティックを用いること)、治療のプランBを用意することの重要性が強調された。また矯正歯科治療が、気道の確保やOSASの改善に関係する可能性にも触れられた。患者は自分らしさを楽しみたいだけ―――その可能性を引き出す新しい矯正歯科治療を講演の後半は、デイモンシステムとデジタル矯正システム・インシグニアの統合的アプローチについて解説された。歯科におけるデジタル技術は治療の流れを効率化し、患者にも歯科医療側にもメリットがあること、そしてデイモンシステムとインシグニアの統合的活用は、現代の忙しい患者らの生活、複雑な生活背景や生育環境をバックアップするものであると、症例で実証していった。また氏は、「患者、特にミレニアル世代以降の青少年らは自分らしさを楽しみたいのであり、スマイルについても、規格化された美しさではなく個性ある美しいスマイルを手に入れたいのだ。そのニーズに、デジタル矯正歯科治療ができることは多くある。実際に症例を見てもわかるように、患者たちは非常に満足してくれている。歯科医師も新しい技術や臨床感覚を積極的に取り入れ、矯正歯科治療を行う者としてこのデジタル時代を楽しむことだ」と、講演を締めくくった。参加者からはエラスティックの使用や効用に関する質問の他、「関連文献が多く紹介され臨床の自信になる」「米国のみならず欧州各国で両システムを用いた症例や知見の蓄積があることが知れた」等の感想が寄せられた。ClassⅡ症例に対する統合的アプローチで知られるフィリップ・ヴァン・スティーンバーグ先生初来日講演緊急レポートベルギー・ブリュッセル自由大学歯学部卒後、矯正専門医として15年間にわたり学生の教育に携わる。その後ベルギー・レシーヌにて開業、小児歯科医や顎顔面外科医などの専門家と連携をとりながら臨床を行っている。その間、サンピエール大学病院の歯科矯正部門の創設・発展にも携わった。特にClassⅡ症例に対しデジタル技術と顎矯正手術を併用した矯正歯科治療で著名で、1995年以降、ベルギーをはじめ世界中で講演を行っている。2020年1月23日、ベルギーからフィリップ・ヴァン・スティーンバーグ先生が初来日し、インシグニアの薬事取得記念講演“ClassⅡ症例に対する統合的アプローチ”を行った。記念すべきその様子を、緊急レポートとしてお届けする。多彩なセミナー開催中! Ormcoのセミナー情報はhttps://www.kavo.co.jp/seminar_info_ormcoデイモン®システム、インシグニア™による統合的アプローチとデジタル矯正を語る!

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