デンタルアドクロニクル 2020
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133世代からのユーザーかと思います。Damon先生の来日講演を初めて聞いたとき、顎外装置や付加装置を使わなくてもワイヤー1本で拡大ができること、本来抜歯が必要な症例でも非抜歯できちんと治療ができることに、正直鳥肌が立ちました。特に当時は非抜歯矯正がトレンドだったので、強く興味を引かれましたね。実際に臨床に取り入れてみたら、本当にワイヤーだけで拡大ができる。そして何より歯の動きが早い。従来の治療ではベンディングしたワイヤーで歯科医師が意図した力を掛けて動かす感覚でしたが、デイモンシステムは患者さん自身の筋肉の動きや噛み方で本来あるべきところに歯が自分で動いていくという見たことのない動き方をするので、「全然違うな、すごいシステムだな」と思いました。矯正歯科治療の一番のネック「痛さ」がない!?星野 それだけ動くのに、患者さんの反応もいいんですよね。患者さんが、「矯正装置を着けたら、特に治療経験のある人から“痛いでしょう、これから2年間大変だよ”と脅されるんだけど、治療が進んでもそんな苦痛が起こらない」と言うんです。ワイヤー交換時に響く感じがするくらいだと。「もしかして治ってないんじゃないの?」と周りに言われている間に、どんどん歯列はきれいになって行くという。こうした声からも、すごいシステムだと思います。高 初めての矯正歯科治療がデイモンシステムという患者さんには、そのありがたみがわからないこともありますね(笑)。食事がとれない、眠れない、うずいて仕事や勉強が手につかないということは聞きません。治療期間を比較的短くできる、後戻りが少ない、歯根吸収が起こりにくいということとあわせて、患者さんには大きなメリットだと思います。星野 あと、エラスティックっていろんな色があって患者さんも楽しんでもらえるんですけど、結構プラークがたまりやすいんですよね。清掃しやすくう蝕になりづらい環境を整えてあげるという意味でも、エラスティックが不要になるこのシステムは利点があると思います。デイモンシステム×インシグニア併用のメリットとは高 デイモンシステムもインシグニアも、「患者さんの個々の口腔内や歯列弓にあわせていく」という点で、ベースに流れる概念やメカニクスは同じなんですよね。だからこれまでのデイモンシステムの延長線上にインシグニアがあるという感じです。デイモンシステムを用いた臨床では個人的に、「患者さんの生体の許容範囲内で術者が遊ばせてもらっている」という自由度の高い感覚になれるんです。このデイモンシステムによる治療をインシグニアでデジタル化、ビジュアル化したものを検査診断の段階で見られると、さらにその自由度が高くなる感じがして、一緒に使っていますね。星野 歯根の長さや歯根間距離、歯槽骨の量など歯根に関する情報は、回転中心の位置にかかわるため非常に重要なのですが、以前のデジタル矯正歯科にはこの情報がありませんでした。ですが、インシグニアは患者さん1人1人の歯根の情報が写されたCBCT画像とマージ(併合して用いる)できるんですよね。しかも3Dで。これは画期的なことで、その範囲でどれだけ動かせるのか、動かしてはいけないかがシミュレーションできるのです。これまでも矯正専門医はパノラマを見ながら歯軸をそろえることをやってきてはいましたが、それよりもっと情報量が多く、治療の精度が高くなる3D画像で見られるという点は大きいですね。高 動的治療終了時、歯冠がきれい星野 亨 Hoshino Toru広尾ほしの矯正歯科医院(東京都)院長。日本大学歯学部卒業、同大学院博士課程修了(歯科補綴学)。米国ロチェスター大学大学院 Eastman Dental Center 矯正歯科プログラム修了、同大学臨床准教授。国内外の学会・フォーラムにてデイモンシステム関連講演を行うなど、精力的に活動している。高 大松 Ko Daimatsu大松矯正歯科クリニック(東京都)院長。城西歯科大学歯学部卒業、明海大学大学院博士課程修了(歯科矯正学)。明海大学歯学部歯科矯正科勤務を経て、現職。インシグニア、デイモンシステムを臨床に取り入れた後は、セミナーにてその実践を伝える講師として、また明海大学歯学部歯科矯正科非常勤講師として活躍中。

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