デンタルアドクロニクル 2020
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20「安全なインプラント治療」の実現のために 2019年3月14日、独立行政法人国民生活センターは「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか―なくならない歯科インプラントにかかわる相談―」に関する報道発表を行いました。歯科界においては、安全・安心な歯科インプラント治療を広く国民に提供するために、よりいっそうの対策が求められます。 本欄では、小倉 晋先生(日本歯科大学附属病院 口腔インプラント診療科科長・准教授)に術者ならびに教育者の立場から歯科医師に求められることについてうかがいました。(編集部)小倉 晋 SHIN OGURA日本歯科大学附属病院口腔インプラント診療科科長准教授1998年3月、日本歯科大学歯学部卒業。1999年4月、同大学歯学部附属病院インプラント診療科医員。2004年4月、同大学歯学部附属病院助手。2009年4月、同大学附属病院講師。2015年4月、同大学附属病院口腔インプラント診療科科長・准教授。現在に至る。――インプラント治療を受ける患者さんにとっての「安全」とは、「長期的に機能する」ということが大前提となります。加えて患者さんの歯や口に関する関心の高まりから「審美性の回復」「侵襲性の少なさ」といった部分も求められてきていると思います。そのような要求を満たすうえで、術者側にはどのようなものが求められていると思われるでしょうか?小倉:インプラント治療に限らず、治療に臨むうえで術者には治療に関する十分な知識とそれを実行するうえで必要なスキルが最低限必要になります。知識という面でいうと、現在大学教育においては、当大学では20年以上前から講義を行っており、8年ほど前から実習を導入しています。 加えて製造元メーカーからの情報提供についても非常に重要です。メーカー側は製品を購入してもらうだけでなく、定期的にセミナー・講演会ほかさまざまな媒体をとおして正しい製品情報を発信することで、自社製品を正しく使用してもらうようにする必要があると感じます。また、メーカーの担当者によっては専門知識の有無や、入手できる情報量に差があるように感じることもあります。メーカー側も術者同様に継続した社員教育を行うことでお互いにレベルアップをすれば最終的により患者さんの利益につながると思います。もちろん、製品が信頼性の高いものであるということが必要条件になります。 そして、インプラント治療を受ける患者さんに術前の検査・診断、治療計画、予後などをしっかり説明することは、インプラントを長期的に機能させるためにはたいへん重要です。「安全なインプラント治療」の条件とは求められる正確で信頼度の高い医療情報――製品の信頼性の高さという部分では、どのような点を重視して判断していらっしゃるのでしょうか?小倉:インプラント体はとりわけ患者さんの顎骨内に埋入される医療器具であるわけですから、最低限日本国内で使用するために必要な関連法規の要件を満たしている必要があると思います。現在国内では、おおむね50種類近いインプラントシステムが臨床現場で用いられていると聞きますが、その中には国内関連法規を満たさずに使用されているものもあるようです。 また、採用する製品については臨床での実績も重視しています。世界的に見てもシェア上位の数社は比例して臨床データの量が多くさまざまな症例についてのエビデンスが網羅されています。これはすなわち安全性、有効性が保証されていることになります。類似ケースにおける術前の綿密な治療計画にも有用です。 インプラント治療に関するインパクトファクターの高い雑誌の論文数が不足している現状のなか、私たちが採用しているシステムの一つであるアストラテックインプラントシステム(以下ATIS)では2,000編以上の文献があり、それをベースにした製品開発がされている点はインプラントシステムを選択する際の基準としています。――関連法規に準拠しエビデンスに基づいた製品を使用することは、最低限クリアすべきハードルだと思います。ほかにも実際の臨床において重視している点はございますか?小倉:今回のテーマ“安全”という観点でいうと、術者・患者さん双方にとって外科処置にともなうリスク、侵襲は可能な限り避けられることが求められるのではないでしょうか。インプラント治療における外科処置では症例によっては骨造成など、処置の必要なケースがあります。このような場合、治療時間が通常よりも必要になりますし、術者にとってはより高度なスキルが求められてきます。しかし、最近ではメーカーによってはその充実した製品群により、これらの術式を回避することができる場合もあります。私が使用する ATISにおいても、長さ6mmのショートインプラントや直径3mmのナロータイプのインプラント、そしてユニークな形態をしたプロファイルインプラントなどが揃っていて、これらを活用することで従来必要とされた骨造成を回避することが可能になる場合もあります。患者さんにとっては安全性に加え治療時間の短縮、低侵襲な治療、場合によっては治療費の軽減にもつながるのではないでしょうか。――本日はありがとうございました。インプラントシステムを選択する際の基準安全性・有効性の保証、豊富な臨床実績

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