デンタルアドクロニクル 2020
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特別座談会佐藤●続いて第2部に移ります。第1部では、ZRを中心に材料や器材についての最新情報を取り上げましたが、今度はその普及や活用において不可欠なデジタルデンティストリーを中心に、アカデミックな情報や世界的な潮流、またそれらを担う人材育成など、近未来に向けたテーマでお話をいただきたいと思います。ジルコニア修復 は3Dプリンター で佐藤●まず最近話題の3Dプリンターについて、伴先生からお話をいただけますでしょうか。伴●いま、歯科界ではデジタルが無視できない時代になっています。アナログで印象をとって模型を作って、そのうえで修復物を作るという、従来のプロセスは減っていかざるをえないと思います。印象採得も口腔内スキャナーが保険適用されるのではという噂ばかりありますが、いずれは間違いなく入ってくると思います。そのデータを利用して、いろいろな修復物を作ったり、患者さんの記録としてデータを利用していく時代がやって来ると思います。現在デジタルを利用した修復物の製造はミリング方式のCAD/CAMで行っていますが、ここに3Dプリンターというものが、今後もっと出てくるのではと思っています。佐藤●認可を得たものはありますか?伴●いまのところ3Dプリンターで作った修復物を口腔内に入れることへの認可はされていません。ただし、3Dプリンターで作った鋳造原型をもとに鋳造した修復物を入れることは可能です。テンポラリークラウン(TeC)では一部が認可されています。補綴装置が3Dプリンターでできるようになったら、かなり広がっていくと思います。あと金属では、すでに和田精密さんで導入している、積層タイプでコバルトクロムを盛り上げてクラウンを作るというシステムが実用化されています。行田●セラミックスはないんですか?伴●結構研究されていまして、Lithozというメーカーは3Dプリンターで作ったZRクラウンをIDS(ケルン国際デンタルショー)2019で展示していました。これは実際に3Dプリンターで作って焼いたZRクラウンです(図12)。行田●すごいクオリティですね!伴●かなりの精度までできるようになっています。ただ、とにかく時間がかかる。乾燥・脱脂・最終焼成を含めると3〜4日くらいかかります。いまのところ、そこまで時間をかけてやる価値があるかどうかという問題があります。ただ選択肢として3Dプリンターという方法ができたということは、ひとつの革新であり、素晴らしいことだと思っています。ZRが最初にCAD/CAMで作られた時も、「こんなの使えない」と評価されていなかったわけですが、いまはこんなに活用されるようになりました。3DプリンターによるZRも、もっと焼成時間が速くなって、装置の価格が下がったら普及するかもしれないと考えています。3Dプリンターでセラミックスがプリントできたという点が重要ではないかと思っています。須崎●モノリシックであれば口腔内スキャンのデータで可能とは思いますが、ポーセレンを築盛していくうえでは、技工士さんの作業模型がどうしても必要です。プリンターの模型に関しては、いまどのような流れになっているのでしょうか。伴●作業用模型は結構良くなってきました。ただ高額な3Dプリンターを買う必要があると思います。デジタルの普及は 人材育成-教育の課題-須崎●将来的には、模型レスですべてできるようになるのでしょうか?佐藤●できるようになるとは思いますが、歯科医師にとって模型で確かめたいという思いは、なかなか変えられないのではと考えます。スキャンしたデータを、画像だけで見てこれでOKかと判断できる能力がないと、うまくいかないと思うんですね。伴●そこで教育なんですね。意外に若い人たちは画面の中で三次元的に構築できますね。我々年寄りはそれができない。若い人たちはスマホ世代だからデジタルデンティストリーの 近未来第2部図12 3Dプリンターで 製作された ZRクラウン (LIithoz社)。50

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