デンタルアドクロニクル 2020
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特別座談会佐藤●だから、隣接面コンタクトについて三次元的に静止したものと咬合したものと、どういうふうに対応していくか考えることが重要と思います。須崎●デジタル導入により、自分のところで技工物の製作が簡単にできるようになると思っている先生もいらっしゃるようですが、これまで技工士さんがやってくれて、納品された模型上でのマージンや咬合コンタクト調整もチェアサイドの責任に移るため、ドクターが大変になると思っています。今後デジタルがチェアサイドで普及するには、このあたりが課題のように思います。佐藤●ケース、ケースでどうやってスキャンするか、機械や人によっても方法が違うと思います。フィッティングのさせ方も全然違いますし、同じ人でも誤差が出ます。今後はどんな症例にどのようにスキャンするのか、きちんとできるように共通化していく必要があると思います。ちょうどいま私どもでも論文にまとめているところです。日本中の 手作業を楽にするため 先手をうつ佐藤●先ほどの歯科医師の模型へのこだわりの話に戻りますが、結局材料も含めてお金をかけると精度の高い模型ができてくる。でも、そうすると模型代が高くなってしまうんです。理想は模型のコストは低くて精度が高い、そうなるとデジタルはもっと普及するようになると思いますが。やはり日本の先生方は、出来上がりを模型で見たいというのがあると思うんですね。伴●欧米はその辺ドライで、模型レスで淡々とやっています。患者さんの口の中に入ればいいということで。佐藤●私の同級でボストン大学臨床教授の山本英夫先生に講演をしてもらった時に、鋳造ではなく3Dプリンターで金属床を作っているという症例があって、たしかによくできていました。先ほど金属なら日本でもすでに行われているという話がありましたが、金属床はそちらに行くかもしれないですね。伴●金属の3Dプリンターは、完成後の変形との戦いがあり、いろいろと苦労しているようです。ノウハウが必要なようで、小さな技工所では難しいですね。全国から注文を受けて一度に300〜400個作るというような大きな技工所であればできると思います。ヨーロッパでは専用の機械も随分売れているようで、いまやコバルトクロムはほとんど鋳造しないと聞きました。須崎●機械を使うことでマンパワーを補えるという点で魅力ではあるのですが、我々がおつきあいしているような小さい技工所の皆さんにとっては死活問題ですよね。みんなデジタルに希望をもっていますが、いまは高いし、大きい技工所はできるけど、逆に小さい技工所の仕事は減ってしまいます。コストや環境的な問題を乗り越えて、身近なところでできるようなデジタルデンティストリーになればと願っています。佐藤●あと、海外でできているから同じように日本でもできますかというと、難しいところがあるような気がしています。アジア人では咬合調整を確実にしないと、顎関節症を含め、いろいろな問題が起こってくると思います。伴●咬合調整はものすごく重要です。佐藤●「ZRは対合歯を壊してしまいませんか」という質問に対し、第1部での話にもあったように、「咬合面は摩耗しないので全然問題ないですよ」と答えています。しかし、メインテナンス時に咬合調整を確実にしないといけません。インプラントの場合、インプラントがダメになるか、対合歯を破折させる形になるので、とくに注意が必要と思っています。伴●金属の修復およびレジンの修復に慣れてしまっていますね。咬合調整が不十分でも口腔内で自然に合ってきますから。行田●現時点では、私も咬合器上でしっかりワックスアップできるような環境を整えておくことまでしか行っていません。そこから先は心配でやっていないのですが、模型上でしっかり作ってワックスアップしたものは、口腔内での調整がほとんど必要なくなりました。現在は、ほとんど調整しないでセットまでできています。現状ではOKという感覚をもっています。先ほどより研磨の重要性をうかがっていますが、以前と比べて、そんなに研磨が必要ないくらいまで精度は上がってきているという実感があります。こうした周辺機器の進歩とともに、次のステップとして大学教育のほうでも頑張ってもらって、そこにリンクし対応できるような人材を育ててもらえたらと思います。伴●どれだけデジタルデンティストリーで作っても最後の仕上げは人間がやらなければなりません。マンパワーですね。だからさんの扱われている多くの製品は、今後も絶対に必要とされ続けますね。茂久田●ありがとうございます。52

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