デンタルアドクロニクル 2020
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66クラレノリタケデンタル株式会社山﨑長郎  荒井昌海  高垣智博情報に踊らされないために、自分の中で評価基準を作ることが重要―本日はお集まりいただきましてありがとうございます。今回は「これからの歯科医療の発展を支える世代に向けて」というテーマで先生方のお話をお聞きできればと考えております。 まずは先生方が歯科医師として活動を始められたころのお話をお聞かせいただけないでしょうか?山﨑 私が歯学部を卒業して最初に渡米した最大の理由はオクルージョンを学ぶことでした。今考えると隔世の感があるのですが、当時はやはりアメリカ・ファーストで、開業前にどうしても米国で学びたいと思いました。現在のように情報が溢れていたわけではなかったですから、知識や技術に飢えていて米国の歯科医療に大きな憧れがありました。逆に今はありとあらゆる情報が溢れているので、そこから正しい選択をすることが非常に難しいと思います。情報が多すぎるというのも1つの問題なのではないかと思いますね。情報を選択する能力が問われる時代だと思います。荒井 私は1999年に卒業しました。当時もインターネット自体はあったのですが、ダイヤルアップ接続で非常に遅かったため、インターネットで何かを調べるという時代ではなかったです。ですから、情報収集といえば雑誌や大学の教科書、そしてもっとも大きかったのは大学の先輩から得られる情報でした。現在はネットの情報量が膨大ですから、山﨑先生がおっしゃったように情報を取捨選択する能力が必要で、なければ情報自体がないのと一緒です。「だれが」「どこから」発信しているのかをきちんと整理しなければいけない時代になっていると思います。高垣 私は2004年に卒業したのですが、当時はインターネットが普及し始めた時期でインターネットでもかなりの情報量を集められるようにはなっていました。とはいえ、まずは先輩に教えてもらうというのが基本で、部活などさまざまなコミュニティに参加して先輩から直接教えていただいたことが当時の私のほぼすべてだったと思います。 現在も私は大学に所属しておりますので、そこで学生や若い世代を見ていると、空いた時間を使ってタブレットPCで今日の治療の手技の動画を検索して確認してから実践に臨む、というような時代になってきているのだなと思います。ただそうして簡単に情報が得られる反面、それだけだとその情報が正しいのかという精査が難しいのですよね。特に私が専門にしている接着分野は歯科医師によって言っていることがまったく違う場合もありますし……。山﨑 確かに接着も含めてさまざまな流派があって、それぞれ自分の考えが正しいと言われると、結局何が良いのかがわからないですよね。特に若い歯科医師は臨床経験が少ないので、自分の中に臨床的な基準がないわけですから。やはり自分の中で基準を作る必要があります。もちろん私も新しいマテリアルは使っていきますが、その新しいマテリアルを評価するためには、自分の中の基準がなくては判断できないわけです。 あとは、そういった基準を臨床経験の浅い方々に伝える役目として、スタディグループなどを作っていったわけです。良い臨床医を育てるために、学校では補いきれないスキルやナレッジを私たちのような存在が補っていく。そういった中で本当に真の声を伝えるということは大事だと思っています。「これからの歯科医療の発展を支える世代に向けて」

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