デンタルアドクロニクル 2021
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8Dr. Katsuichiro Maruo丸尾勝一郎(まるお・かついちろう)2005年、東京医科歯科大学歯学部卒業。2009年、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科インプラント・口腔再生医学分野修了(歯学博士)。2010年、岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座助教。2011年、同附属病院インプラント外来医局長。2012年、米国ハーバード大学歯学部インプラント科ITIスカラー・研究員。2013年、神奈川歯科大学大学院口腔機能修復学講座 咀嚼機能制御補綴学分野助教。2015年、同附属病院診療科講師。2017年、日本口腔インプラント学会専門医取得、同大学院口腔統合医療学講座補綴・インプラント学講師。2018年、同大学院口腔統合医療学講座補綴・インプラント学非常勤特任講師、三軒茶屋マルオ歯科開院。2019年、ITI Fellow就任。COVID-19感染拡大をきっかけに、私の医院で変わったこと 2019年の終わりごろに発生した新型コロナウイルス感染症(以下、CO-VID-19)は、現在も世界各国で猛威を振るっています。昨年3月11日には、WHOがCOVID-19の感染拡大はパンデミック(世界的大流行)相当であるとの認識を示しました。 日常的にウイルス感染のリスクに晒されている医療現場は、現在も混乱を極めています。もちろん、それは歯科も例外ではありません。歯科では今、患者さんやスタッフに対する感染対策が急務となっています。 2020年3月15日には、ニューヨークタイムズのwebサイトに、感染リスクのある職業として歯科医療従事者が全職種中でトップレベルにあることが報道されました。本サイトには横軸に“物理的な近さ”(Physical proximity)、縦軸に“病気への暴露”(Exposure to diseases)と設定された分布図があり、それぞれの数値座標に就業人数が円の大きさとしてプロットされています。 歯科医療従事者のなかでもっともリスクが高い職業は歯科衛生士で、“物理的な近さ”、“病気への暴露”ともに100という最高値でした。これは各メディアにおいても取り上げられ、コロナ禍における歯科への通院の可否が議論されるに至ったことは記憶に新しいです。 これを受けて「歯科医院はCOV-ID-19の感染リスクが高い」というように報道されていることもあり、患者さんの意識は「感染対策がしっかりできている歯科医院に通いたい!」という方向に変化してきていると私は感じます。患者さんにはもちろん、スタッフにも万全な感染対策を! COVID-19の生存期間について、空気中に浮遊するエアロゾル(水分などの微小粒子)内では数時間、プラスティックやステンレスの表面では1日以上生存することが報告されています。このことから、COVID-19の主な伝播方法は、・接触感染、・飛沫感染、・エアロゾル感染、の3点であると考えられます。 これを受けて当院では、患者さんに対して事前に電話やオンライン上でCOVID-19様の症状がないかの確認を行い、感染疑いのある患者さんの来院を未然に防いでいます。 さらに、来院された患者さんには検温を行い、COVID-19に関する問診票に記入していただくなど、従来よりもより万全な感染対策を日常的に講じるようになりました。 そのほかにも当院では、待合室内の十分な換気や、共有物(雑誌など)の撤去、ホームページや院内掲示などで、どのような院内感染対策を講じているかを明確にアピールするなど、患者さんにより安心して来院いただくために、できる限りのことをしています(図1、2)。 また、冒頭でも述べたとおり、歯科医療従事者は感染リスクがもっとも高いので、「COVID-19に感染するのではないか?」という恐怖がつねにあります。この恐怖と向き合うのは非常にストレスフルですから、歯科医院スタッフへの感染対策がおろそかであれば、スタッフの退職にもつながりかねません。そのため、スタッフに対するウイルス感染への安心、安全も担保する必要があります。 当院では、開業当初より1996年に米国疾病管理予防センターによって発表された、スタンダードプリコー困難な状況に適応することこそが、歯科医療従事者にできる最大の努力巻頭特集1-2オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代

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