デンタルアドクロニクル 2021
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99尾島賢治氏医療法人社団スマイルイノベーション(東京都) 理事長日本アライナー矯正歯科研究会(JAAO)代表DSD(デジタル・スマイル・デザイン) Key Opinion Leader昭和大学歯学部卒。2007年インビザライン・アライナー矯正専門クリニックである本郷さくら矯正歯科を開設。大河雅之氏医療法人社団佳友会 代官山アドレス歯科クリニック(東京都) 院長日本臨床歯科学会(SJCD)東京支部 会長東北歯科大学卒。2001年代官山アドレス歯科クリニック開業。アライナー矯正治療は患者ベネフィットが非常に大きい尾島:JAAOでは、アライナー矯正治療は患者さまのニーズもありますし、新しい矯正治療の1つのツールであるとして活動しております。一方で、日本では、はたして歯がちゃんと動くのか、クオリティがどうなのか等いろいろなご意見があると思いますが、大河先生はどのようにお考えですか。大河:ここ5、6年前からは矯正治療のなかでアライナーを使用する頻度はハイブリッドを含め増えてきている印象です。特に大臼歯のインターカスペーションが整っている症例におきましては、私自身がアライナーを使用しトゥースポジションの改変を積極的に行うようになりました。以前は、私の周りではマルチブラケットの先生が多く、アライナーの限界について話しをされていたこともあり、私も当初はアライナー矯正治療のゴールに対しては少し懐疑的でした。そうしたなか、他院の著名な矯正専門医にてアライナー矯正治療中の患者さまなどが私のクリニックにちらほら来院されるようになって、診てみるとたしかに途中は顎間ゴムやアタッチメントなどを併用されているようでしたが、結果としては患者さまも喜ばれていて想像していたより仕上がりもいいなと。やはり患者さまのベネフィットは非常に大きいと感じました。患者さまとしてはきれいになるために矯正する方が多いわけです。それがきれいになるための途中が、マルチブラケットの針金が嫌だとか、舌側矯正は舌が痛いというようにハードルが高いというのは事実で、そうした患者さまの声をよく耳にします。ですから臨床的にアライナーはうまく使えば、患者さまが受け入れ易く、マルチブラケットに匹敵する効果がある矯正法になり得ると思います。今後もアライナー矯正治療は進化していく尾島:私は、10年後はすべての先生がアライナー矯正治療をしていると思います。先生方が一度アライナー矯正治療でできる範囲がわかってしまって、なおかつ患者さまもその快適さを知ってしまうとそこから、マルチブラケット矯正などに戻るのはなかなか難しいと思います。大河:私はインビザラインGoが開始された2、3年前にアライナー矯正治療を始めました。基本的に複雑な症例は矯正の専門医と一緒にやっていますが、患者さまも忙しい方が多いので、まず簡単な症例を自らやって問題がなければ広げていこうという感覚でした。やってみたところ私が思っていた以上に効果が高かったのはありますし、まず早い。われわれMI審美修復治療に携わる者としては、歯根のアンギュレーションやトルク、もしくは圧下ですとかそれらの結果としての歯と口唇との関係、ブラックトライアングルの発現や歯の削除量などを細かく診断します。レントゲンやセファロもないようなシステムでは当初はできないと思っていたのですが、術中・術後にレントゲンやセファロを撮影してみるときちんとできているんです。補綴修復医の立場から言いますと、コンビニエントさがアドバンテージなシステムではあるとは思いますが、従来型の修復治療前処置としての矯正治療と同様に、16枚法のデンタルやセファロ、CTによる分析・診断などを併用することで、より高い結果が得られると感じています。また、以前は移動の早さゆえに保定に苦慮していたのですが、アライナー矯正に適応した支台歯形成を考案し、ほぼ解決しました。デジタルもそうですが新しいテクノロジーに合わせてわれわれクリニシャンのテクニックもアダプトさせていく時代がきていると思います。本当に薄い、マウスピースやナイトガードのような見た目のアライナーですが、テクノロジーの偉大さを感じますね。尾島:大河先生のような矯正専門医ではない臨床医の先生が、アライナーを入れていいんだと言っていただくことが、すごく大きなことだと思います。大河:海外の学会でブースを見たときに、今一番大きいブースは、インビザラインなどのアライナーの企業で、歯科医師を含めた業界に大きく支持されている感があります。今後もとても早い速度で進化していくと思いますよ。

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