デンタルアドクロニクル 2021
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オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代  巻頭特集111境をつうじてスタッフや患者さんへの二次感染につながること、作業者間での洗浄のバラつきや洗浄不足によって既洗浄器材に汚染物質が残留する可能性が高いことなど、多くの問題が挙げられます。それほどまでのリスクを負ってまで用手洗浄に固執しますか? 飛散感染対策としては、ウォッシャーディスインフェクター(WD)を使用するほかありません。WDは一度作業を開始すると、一連の工程が終了するまで作業者が汚染器材に触れることは一切ありません。また、すべて庫内で作業が行われるWDでは周辺に飛散することがないため、感染のリスクもなく、安全性に優れています。生体毒性の強い消毒薬の使用によるリスク&マネジメント 耐熱性に優れず高圧蒸気滅菌に適さない器材には、必然的に化学的消毒法としてグルタラールやフタラールといった高水準消毒薬が採用されています。しかし、このグルタラールとフタラールはホルマリンを改良したアルデヒド系消毒薬で、非常に強い毒性を有します。ほぼすべての病原微生物を殺滅できるだけの威力をもつため、使用時には化学物質防護具の着用など厳重な安全対策が義務づけられていますが、多くの歯科医院ではその対策が不十分であり、コデンタルスタッフの健康が脅かされています。 また、そもそも消毒とは微生物をすべて殺滅することではありません。滅菌とは異なり、殺滅目的に応じた消毒薬を選択すればよいのです。したがって、すべての病原微生物を死滅できるほど強力なグルタラールやフタラールを常時使用することは疑問視するべきです。消毒薬を選ぶ際には、人体に無害であることを必須条件として考えなければいけません。 毒性の強い消毒薬を回避する対策としても、やはりWDが必要です。WDは洗浄だけでなく、熱水消毒も確実に安全に行うことができるため、高水準消毒薬の代替として十分な効力を発揮します。安心安全な歯科医院づくりにスタッフ全員で取り組む COVID-19だけに限らず、コデンタルスタッフは今回ご紹介したようなリスクとつねに隣り合わせであることを強く意識しなければなりません。これを放置すれば、感染や健康被害を恐れるあまりに離職が頭をよぎるかもしれません。また、自分を守る感染対策として働く環境を変えることもあるでしょう。コデンタルスタッフにとっても安心安全な歯科医院づくりに、院長が率先して取り組むことが不可欠だと思います。 今回お伝えしたように、エアロゾル感染、用手洗浄による飛散感染、生体毒性の強い消毒薬の使用については、すでに解決法があります。それを確実に実践するためには対策環境の改善が必須であり、そのひとつがWDの導入なのです。WDを設置することで、用手洗浄による飛散感染を防止でき、生体毒性の強い消毒薬が不要となり、コデンタルスタッフは飛散感染や健康被害から守られるのです。 これを機に、スタッフ全員で自分たちを守る感染対策を見直しませんか。参考文献1.伊藤磨樹,中村健太郎.[緊急企画]院内感染の90%は手指が原因 歯科医療従事者の正しい手指衛生.歯科衛生士 2020;44(4):46-61.2.中村健太郎,伊藤磨樹.リスクはエアロゾル感染だけ? 自分を守る感染対策.歯科衛生士 2020;44(12):24-38.3.中村健太郎,山本司将,伊藤磨樹,山本美由紀.決定版 歯科医院のための感染対策 ヨーロッパ基準のインフェクションコントロール.東京:クインテッセンス出版,2018.図1 エアロゾル吸引時の注意点図1a ユニバーサルカニューレを口角部に配置することで、口腔開口部でエアロゾルを適切に吸引することができる。図1b ユニバーサルカニューレを口角部から口腔内に移動させると、エアロゾルの吸引ができず、口腔外に一気に拡散される(患者の顔にかけたペーパーが湿っている)。図1c 一般的なL 字型バキュームチップでは吸引力が著しく低下するため、口腔開口部に配置してもエアロゾルの吸引ができず、口腔外に一気に拡散される。詳細は『歯科衛生士』2020年12月号特集1を参照。

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