デンタルアドクロニクル 2021
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12Dt. Masakazu Onishi大西正和(おおにし・まさかず)1971年 大阪大学歯学部附属歯科技工士学校卒業。同学部附属病院歯科技工研修生。1972年 同学部附属病院入職。同歯科技工士学校臨床実習指導教官委嘱。1974年 日本銀行診療所採用。2005年 日技生涯研修認定講師就任。2012年 大阪大学非常勤講師(歯学部歯科技工士学校)就任。2017年 広島大学客員講師(歯学部口腔健康科学科)就任。日本補綴歯科学会等講演、厚労省後援「感染症予防歯科技工士講習会」講師(2004年~)。同講習会テキスト執筆(2004、2013、2020)、日本歯科理工学会誌、日本歯技、QDT等に投稿。はじめに 公益社団法人日本歯科技工士会(以下、日技)は、2003年から厚生労働省後援「感染症予防歯科技工士講習会」を各地で実施し、歯科技工士に対し既存のB型肝炎、C型肝炎、新興感染症に関する研鑽を重ねてきました。 ところが昨年、そのような備えを遥かに凌ぐ「新型コロナウイルス感染症」(以後、COVID-19)のパンデミックが発生し、日技は、会員の不安を解消するために、HPや広報誌により対応策などの情報を発信しました。 しかし、その後にCOVID-19のウイルスであるSARS-CoV-2が唾液から検出されたことにより、石膏模型の扱いをはじめとする各作業工程の抜本的な見直しが必要となっています。オールデンタルの連携が不可欠 歯科3職種は、「国民への良質で安全な歯科医療の提供」という共通の責務を負いながら、感染対策についての議論が充分になされているとはいえない状況にあります。 たとえば、歯科技工所が受領する作業用模型は、印象体の段階での消毒に関する情報提供がされておらず、技工指示書でもその確認ができないのが一般的です。また、一部の模型には血液の混入が目視できるものもあり、多くの歯科技工士もこれを素手で扱うことに抵抗感を持っていません。 B型肝炎ウイルスは、環境表面で1週間は活性を維持しているとの報告があります1。未消毒の作業用模型を直接扱う歯科技工所の従業員は絶えず感染リスクに晒されており、納品される補綴装置と作業用模型は歯科医院を逆汚染する可能性もあります。このような汚染のサイクルを断ち切るためにもオールデンタルの連携は不可欠です。「ZONE」の概念と搬送物の消毒責任 医療施設内での微生物汚染の拡散を防止するために「ZONE」という概念があります(図1)。ZONE内では、次の3要件の順守が求められます。①ZONEに感染因子を持ち込まない、②ZONEから感染因子を持ち出さない、③人や物がZONEを越境する際には適切な感染対策を行う。 印象体をこれらの要件に照らすと、診療ZONEでの消毒・除菌を行った上で歯科技工所に発注する必要があります。一方、完成した補綴装置などは歯科医院への納品の前に技工ZONE内での消毒・除菌が必要です。まずは市中感染に対する備えを 医療従事者は、COVID-19への感染について、患者由来の「職業感染」を考えがちです。しかし、私たちは医療従事者であると同時に社会人であり、通勤・買い物・外食などの際に「市中感染」の可能性があります。歯科医療従事者として市中感染を医療の場に持ち込まない備えが必要であり、そのためには、①起床時の検温、②手指洗浄の励行、③マスクの常用、④アルコール手指消毒、⑤3密を避ける、⑥自身の健康維持、などが挙げられます。歯科技工所のCOVID-19対策1)管理者と従業員の備え 従業員は、出勤前に発熱・咳・喉の痛み・倦怠感などがある場合は、まず管理者に連絡の上、指示に従う必要があります。軽率な出勤は、他の従業員をも感染させ、自社の業務を停止に追い込むばかりか、取引先の歯科医院にも影響を及ぼす可能性があります。 一方、管理者は、従業員からの申し出に対して適切な指示ができるようにマニュアルを策定し、全従業員にも周歯科技工における新型コロナウイルス感染症を含めた感染対策巻頭特集1-4オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代

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