デンタルアドクロニクル 2021
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16Dr. Katsuji Okuda奥田克爾(おくだ・かつじ)東京歯科大学名誉教授。東京歯科大学微生物学講座助手、講師、助教授を経て、米国NIH Fellowとしてニューヨーク州立大学バッファロー校歯周病学研究センターに留学。帰国後、東京歯科大学微生物学講座教授に就任。厚生労働省長寿科学総合研究事業へ参画。日本歯科医学会会長賞受賞。野口英世記念会理事、日本歯周病学会名誉会員。著作に『デンタルプラークのすべて』(医歯薬出版)ほか多数がある。感染リスクを下げる切り札は歯科にある 現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス。昨年末から英、米で摂取がはじまったファイザー製薬のワクチンなど、つぎつぎに届くワクチンの情報に期待が膨らむ一方、現状では、有効な期間や副作用についてなど、乗り越えなければならない課題も少なくなさそうです。 おもえば私たちは、この20年ほどの短いあいだに、SARS、MERSなど、ワクチンや特効薬のない新種のウイルスに脅かされてきました。また、毎年流行する季節性インフルエンザでは、ワクチンや特効薬がすでに開発されているにもかかわらず、WHOの推計では25〜50万人の命が奪われているとされています。 さらにはここへきて、Withコロナの時代に突入しワクチンや特効薬にいまだ頼れないなか、いかにして感染防御力を上げ、感染を免れるかが重大な関心事となっています。そのための重要な切り札が「じつは歯科の日常臨床にある」ということを、私は歯科医療に従事するみなさんにぜひ知っていただきたいのです。そして、歯科の日常臨床、なかでも歯周病の予防管理が、「患者さんの感染リスクを下げ、命を守るための役に立っている」——そのことを自信を持って認識していただきたい。そして患者さんに、お口の健康の大切さを伝えていただきたい、そう思っています。約100年前のパンデミックその記録から学べること 「お口のなかの炎症」と「ウイルスが引き起こす感染症」の関連性については、じつは約100年前のスペイン風邪歯周病予防で感染症対策。歯科の日常臨床こそウイルス防御の切り札だ!巻頭特集1-6オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代歯周病を予防するとウイルス感染が減るインフルエンザの発症率(%)口腔ケアを受けなかった人口腔ケアを受けた人1006428減りました!9%1%歯科衛生士による口腔ケアを継続的に受けた要介護のかた(98人、うち36%が予防接種済み)と、口腔ケアを受けなかった要介護のかた(92人、うち39%が予防接種済み)のインフルエンザの発症率(%)をくらべました。Abe S, Ishikawa K, Adachi M, Sasaki H,Okuda K.Professional oral care reduces inuenza infection in elderly.Arch Gerontol Geriatr 2006;43:157-164.歯周病の人はウイルス感染しやすい!800604020スペイン風邪の罹患率(%)歯周病になっていた人歯周病になっていなかった人なんと罹患率が半分以下!72%32%スペイン風邪(H1N1型インフルエンザ)のパンデミック下のアメリカ人とイギリス人260人について、歯周病の有無とスペイン風邪の罹患率(%)を調べました。ウェストン・プライス『DENTAL INFECTIONS, Oral and Systemic』より

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