デンタルアドクロニクル 2021
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だけで歯周病菌を保持している人は結構います。もしくは歯周病になっていても気づかず放置されているということもあるので、歯周病の予防を医療分野ともう少しつなげるような組織づくりにも取り組んでいます。悪玉菌だけに特異的に効果を発揮多機能性の物質「クルクミン」――Pg菌の増殖抑制効果があるクルクミンは、口腔内の細菌にどのように作用するのでしょうか。天野:クルクミンは多機能性の物質といわれていて、菌の細胞壁を通り中に入って作用します。溶けにくい性質があるクルクミンですが、冒頭に更家社長からご説明があった技術的なイノベーションによって、溶けたクルクミンが活性酸素を作って菌のタンパク質を変性させるなど、多様な生化学的変化を起こして菌をバーストさせ、効果を発揮するのです。 また菌が産生したプラークに対しても効果があります。通常の殺菌成分が含まれている歯磨剤はプラークを作っている途中に作用させると効果がありますが、クルクミンの場合は、完成したプラークも無害化していきます。電子顕微鏡で見ると、菌の表面をツルツ図10 クルクリン音波ハブラシ(左:Homeタイプ、右:携帯可能なPocketタイプ)。2021ルにして、ネバネバしていた菌がマシュマロのように膨れて病原性を発揮しなくなるのです。さらに、歯科では再生医療の進歩に期待が高まっていますが、再生を促すための基剤にクルクミンを入れると、細胞の増殖活性が非常に上がる結果も出ています。これからの研究に注目したいですね。更家:使用後、すぐに効果が出るわけではないのでなかなかわかりにくいかもしれませんが、私も使用した実感として、たしかに効果はありますね。天野:クルクリンの効果について、エピソードを2つご紹介します。 1つは、ある歯科企業の社員を対象に歯周病の細菌検査を実施したところ、Pg菌がかなり多く検出された社員が2人いたそうです。その2人にクルクリンを使ってもらい1週間後に再び調べると、そのPg菌がほとんど検出されなくなったそうです。 もう1つは、社員のご親戚の男性が重度の歯周病で、歯科医院に行ったところ「だいぶ重症化しているから歯ぐきを開いて外科手術するしかない」と説明され、すっかり怖がって「手術は怖いから嫌だ」と言って帰ってきたのです。それを聞いた義理の妹である社員の方が「それならクルクリンを使ってみれば?」と薦め、歯間ブラシに付けて使用し続けた1か月後に歯科医院に行ったところ、「何があったの?とっ健康長寿社会の実現に向けた の挑戦55

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