デンタルアドクロニクル 2021
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ても歯ぐきがきれいになっている!」という信じられないエピソードを聞きました。この話を聞いて「ああ、クルクリンはやっぱり効くんだ」と驚いています。更家:一般的な殺菌剤や抗生物質は、口の中に存在する菌全体に殺菌力を発揮します。もちろん、その中には善玉菌もたくさんいるので、その善玉菌も殺してしまうことになります。しかし、クルクミンは悪玉菌だけに特異的に効果を発揮するということが当社の研究で明らかになりましたので、その悪玉の歯周病菌だけに有効であることは、クルクミンの特長といえるでしょう。天野:更家社長がおっしゃるように、一般的な歯磨剤とか洗口液に入っている殺菌成分は、すべての菌をイコールに殺していくわけです。そうすると万遍なく菌の量が減り、プラークができるときにはまた万遍なく同じような菌叢ができてしまう。減らしてはまた増えるといういたちごっこなのです。 ところが、クルクミンのように悪玉菌だけに効果が発揮されると、悪玉菌が減った隙に善玉菌が増えるのです。そうすると悪玉菌がリカバリーしようとしたときには、例えば自分が座ってあります。また、自分の歯の健康状態をつねにチェックできる、可視化できるシステムがあれば、患者さんにも医療従事者にも両者にとって役立つのではないかということで、そういう取り組みも始めています。天野:とても楽しみですね。更家:まさに天野先生が取り組まれてきた「予防」の時代が到来していると思います。予防歯科のさらなる周知と普及へサラヤ社の今後の展望――2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大によって、私たちの日常生活は一変しました。医療現場においても、今なお厳しい状況が続いています。今回の新型コロナウイルスによってオーラルケアの重要性がより周知されつつあると思いますが、最後に更家社長にはサラヤ社としてのオーラルケアの今後の展望と、天野先生には予防歯科を国民に広く周知するための今後の展開について、メッセージをお願いいたします。更家:コロナ禍では、歯科治療で発生するエアロゾルなどによって歯科受診を避ける方が多くみられましたが、この不安をできる限り解消することが必要です。 われわれの立場として取り組むべきことは、まずはウイルスを外部から持ち込まないように、入口にアルコール手指消毒剤を設置するなど、手指消毒の徹底です。またマスク、フェイスシールド、グローブの安定的な確保・提供をはじめ、標準的な感染予防対策の実施、そのうえで新型コロナウイルス特有の感染対策です。私たちは、患者さんと医療従事者が安心・安全に治療がいた椅子(場所)がなくなり、菌を増やすことができなくなるわけですよ。更家:まさに椅子取りゲームですね。天野:歯周病の菌叢は、生まれたときからどんどん積み重なり、そして大人になって完成します。最近の研究では、小児の口腔細菌叢は将来的に歯周病に罹患するような悪い菌叢と、そうではない菌叢に分類されるようです。例えばクルクミンのような選択的な殺菌力をもっているものでコントロールできれば、悪い菌叢になるような子どもには、クルクリンを毎日使っていただくことで悪い菌叢になるのを防げるということになります。良い菌叢ができるように作っていく。このような時代がやがて到来すると思います。更家:当社では、別の事業分野である皮膚関係のお仕事でバイオフィルムに関する商品を提供していますが、例えば皮膚は褥じょくそう瘡によってバイオフィルムができると難治性になります。そのため、この有無で治療方針が変わります。そこで短時間でバイオフィルムが検出できる商品を開発しました。 ですから、当社全体としては、予防や治療の面からも菌叢に非常に興味がQuint Dental AD Chronicle 202156

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