デンタルアドクロニクル 2021
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6Dr. Ryutaro Kobayashi小林隆太郎(こばやし・りゅうたろう)(一社)日本歯科医学会連合 新型コロナウイルス感染症対策チーム長日本歯科大学歯学部卒業後、同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。2001 年、同大学歯学部附属病院顎変形症診療センター長、2010 年、同大学口腔外科教授。現在、日本歯科医学会総務理事、日本歯科医学会連合専務理事のほか、連合内の新型コロナウイルス感染症対策チームのチーム長として感染対策に尽力している。人類へのウイルス脅威の新たな始まり? “Virus(ウイルス)”とはラテン語で「毒」を意味し、コロナウイルス(Coronavirus)は「CoV」と書きます。細菌よりはるかに小さい病原体は、いまだに世界各国で猛威を奮っています。 新型コロナウイルス感染症の発生源は諸説あり、いまだ不明ですが、2019年12月上旬には中国武漢で原因不明のウイルス性肺炎として最初の症例が確認されました。国際ウイルス命名委員会(International Com-mittee on Taxonomy of Viruses:ICTV)が新型コロナウイルスの名称をSARSCoV-2と決定、2020年2月11日にはWHOがSARSCoV-2によって引き起こされる疾患名をCO-VID-19と名づけました。そして、3月11日にWHOがパンデミックを表明、欧米諸国が緊急事態宣言を発令するに至りました。わが国でも感染拡大が続き、いまだ収束するに至らずこれまでに経験したことのない事態となっています。正しい知識をもって診療にあたりましょう 正しい知識をもって診療にあたることの重要性について、法人格をもつ組織として独立性のある(一社)日本歯科医学会連合が2020年3月からホームページ上で、「国民のみなさまへ」:《ウイルス感染に対抗する歯科の重要性》、「歯科医療従事者のみなさまへ」:《歯科診療における新型コロナウイルス感染症に対する留意点について》《感染拡大時の対応》《コロナ時代の新たな歯科システムを》を発信してきました。 基本は、診療室や待合室などにおける標準予防策と3密への対応です。一方で、大切なこととして、効果のない感染対策を信じることは、感染対策の逆効果となるため絶対に避けるべきであるということです。たとえば、いわゆる「空間除菌」と称する消毒薬を噴霧する感染対策は推奨されていません。また、人がいる空間への次亜塩素酸ナトリウム水溶液の噴霧については、目や皮膚に付着したりすると危険ですし、噴霧した空間を浮遊するすべてのウイルスの感染力を滅失させる保証もないことから、絶対に行わないよう発信しました。 「緊急事態宣言」解除後には、同ホームページ《新機軸 歯科における感染予防》、日本歯科医師会《新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針》に歯科における基本的事項が発信されました。正しい知識による新たな習慣、新たな工夫が歯科におけるニューノーマル(新常態)であると考えています。感染対策の基本:標準予防策と感染経路別予防策 感染対策の基本は、標準予防策(Standard Precautions;スタンダード・プリコーション)と感染経路別予防策です。 1985年、米国疾病予防管理センター(Centers for DiseaseControl and Prevention:CDC)は病院感染対策のガイドラインとして、ユニバーサル・プリコーション(Universal-Precautions、一般予防策)を提唱しました。これは、患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜血液は感染の危険性があるため、その接触をコントロールすることを目的としたものでした。その後1996年に、これを拡大・整理した予防策が標準予防策です。 標準予防策は「すべての患者のすべての湿性生体物質:血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等は、感染性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としています。 実際の診療においては、標準予防策の徹底に加えて3密への対応が重要とウイルスに対抗する歯科の重要性「出口戦略」ではなく「入口戦略」と捉えて取り組む感染対策(一社)日本歯科医学会連合巻頭特集1-1オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代

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