デンタルアドクロニクル 2021
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オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代  巻頭特集17なります。また、患者の健康管理についても注意を払うことが必要です。診療の際には、体調、味覚・嗅覚などの異常の有無について尋ねることと、体温チェックは新型コロナウイルス感染症対策として、感染者を見つけ出すのに有効と考えます。体温については、平熱より1℃以上の体温上昇を発熱と捉えます。診療環境に関する留意点「3 密」を回避しよう! 治療前の感染予防として、患者さんに消毒薬で含嗽してもらい、口腔内の微生物数レベルを下げることも飛沫感染対策として、診療室の環境を清潔に保つための簡便な手段とされています。消毒薬としては、ポビドンヨード、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジンなどが挙げられます。ただし、クロルヘキシジンは、わが国では粘膜での使用でアナフィラキシーショックの事例が報告されていますので、含嗽剤としては0.05%水溶液にとどめられています。 新型コロナウイルス感染症においては、標準予防策に加え、3密への対策が重要なポイントとなります。つまり、「密集」、「密接」、「密閉」により感染拡大が起きるというものです。 歯科診療において重要なことは、これまでの院内感染対策である「標準予防策」に加えて、「エアロゾル感染予防」、「3密回避(密閉、密集、密接)」の概念の認識です。新型コロナウイルス感染対策のポイントは、①ウイルスを含む飛沫が目、鼻、口の粘膜に付着するのを防ぐ②ウイルスが付着した手で目、鼻、口の粘膜と接触するのを防ぐの2つです。診療室内のエアロゾル対策吸引装置の適正使用 標準予防策の遵守、患者ごとの環境消毒の配慮、それぞれの診療室環境に応じた感染予防の工夫により、院内感染対策の向上を図ることが大切です。特に、新型コロナウイルスの場合は、このウイルスの特徴をよく理解したうえで、以下の点に留意してください。・患者の口から放出される液滴とエアロゾルの分散を防ぐため、口腔内での歯科用バキュームの確実、的確な操作が求められる。・口腔外バキューム(口腔外吸引装置)の活用も望ましい。・関連事項として、治療中における飛沫防止のためラバーダムの活用を推奨する。 「エアロゾル」の定義は、国により異なる部分がありますが、「気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子」を指します。 『(公社)日本医師会 新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド』では「飛沫感染と接触感染が主な感染経路だがこれだけでは説明できないのが、マイクロ飛沫やエアロゾルと呼ばれるウイルスを含むごく小さな水滴からの感染である。換気のできない部屋では3時間以上も空中に浮遊し、感染の原因となりうる。また、家具や医療機器の汚染の原因となり、エアコンでこれが拡散されると普通の飛沫では届かない距離にいるヒトに感染する可能性がある」と説明しています。マスク「N95」と「医療用」の違いについて 新型コロナウイルス感染症をきっかけに「N95マスク」、「医療用マスク」という用語をよく耳にします。では、「N95」、「医療用マスク」とはどのようなものかご存じでしょうか(図1)。 実は、マスクの規格については、国際統一はなされておらず、また各国での規格試験も方法が異なるため比較が困難です。日本には、厚生労働省が定めた使い捨て式防じんマスクの国家検定規格「DS 2」が「N95」と同等の性能とされています。数字の記録―パンデミックの歴史、そして今後― 14世紀に流行したペスト(黒死病)は、モンゴル軍のヨーロッパ遠征によって感染拡大が起こり、死亡者はヨーロッパだけで約3,000万人、世界全体で推計5,000万人もの命を奪いました。 2013年には、世界中で感染者783人、死亡者の126人(WHOによると、2010~2015年の報告数は世界中で感染者3,246人、死亡者584人)が報告され、現在、もっとも流行している国は、マダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルーの3か国とのことです。いまだ感染が続いています。 また、1918~1920年に大流行したスペイン風邪は、アメリカの陸軍兵舎で発生し、その後、ヨーロッパ、アフリカへの派兵とともに全世界に拡大しました。死亡者は約4,000万人。推定で患者数は5億人とも言われています。その後、第2波、第3波と続きました。過去のパンデミックをみても、人の移動と3密環境がかかわっている感染拡大です。 そして、世界における新型コロナウイルス感染者数は、2021年1月27日(日本時間)時点で約1億21万人、死亡者数:約215万人で、日本においては感染者数:約37万人、死亡者数:約5,300人を超す状況となっています。 なお、1958年のノーベル生理学・医学賞受賞者である生物学者・レーダーバーグは、「人類の優位を脅かす最大の敵はウイルスである」と述べ、人類がウイルスに対して何も対策を講じなければ壊滅的な被害を受ける可能性があるとしています。図1 医療用マスク(サージカルマスク)の基準。医療用マスクの素材条件(ASTM F2100-11)特性バリアレベル1バリアレベル2バリアレベル3PFE(微粒子ろ過効率)≧95%≧98%≧98%BFE(微粒子ろ過効率)≧95%≧98%≧98%液体防護性80mmHg120mmHg160mmHg⊿P(吸気抵抗)<4.0mmH₂O/cm²<5.0mmH₂O/cm²<5.0mmH₂O/cm²燃焼性Class ⅠClass ⅠClass Ⅰ・ BFE(Bacterial Filtration Eciency;バクテリア飛沫捕集〔ろ過〕効率試験) 試験粒子 黄色ブドウ球菌の懸濁液(約3μm)・ VFE(Virus Filtration Eciency;ウイルス飛沫捕集〔ろ過〕効率試験) 試験粒子 バクテリオファージ(約1.7μm)

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