QDI ダイジェスト見本誌2020
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牧草一人 (Kazuto Makigusa)京都府開業:牧草歯科医院インプラント治療患者の人生主導型-長期予後のこれまでとこれから- インプラント治療の基礎的研究が産声をあげたのは今から70年近く前。その13年後の1965年に、ブローネマルク先生が実際の患者にインプラント治療を行った。さらに16年後、代表的な論文として「欠損顎堤への治療としてのオッセオインテグレーテッドインプラントの15年間の研究」(原題:A 15-year study of osseointegrated implants in the treatment of the edentulous jaw)が発表された。このように慎重に進んだ黎明期を経て、各種の再生治療や骨増生および材料の改良、さらにデジタル技術の進歩によってインプラント治療は発展してきた。 しかし近年では、骨増生や審美治療が脚光を浴び、「清掃性」、「低侵襲性」、「長期的安定性」などの患者の利益に対する配慮が希薄になっていないだろうか。ましてや「患者自身の希望」という医療の本質がおざなりにされ、歯科医師が「自分の好み」で治療法を選択するようでは本末転倒である。 医療において、医療者側が望むと望まざるとにかかわらず医療行為の結果が患者に害を及ぼすことを「医原性疾患」と呼び、その害は施術後速やかに発現するものもあれば数年から十数年後に判明するものまでさまざまである。インプラント治療においては、インプラント周囲炎に代表される多くの問題点が明らかになってきた。近年のインプラント治療はいろいろな点において「少し急ぎすぎた」のではないだろうか。 筆者は歯周病専門医という立場から、インプラント‐アバットメントが口腔粘膜を貫通し口腔内に露出する領域に、天然歯同様の関心を持ち続けてきた。もしも天然歯における歯周炎と類似したメカニズムでインプラント周囲炎が発病するのであれば、この領域の生物学的な安定はインプラント周囲炎の防止に貢献できるのではないかという論理の展開である。この考えを臨床に反映する手法の1つに「プラットフォームスイッチング」がある。 本特集では、ひとりの患者の約15年間にわたる経過をもとに、プラットフォームスイッチング型インプラントの長期的な予後から、患者の人生主導型インプラント治療の実践について考察してみたい。はじめに─歯周病専門医が考えるインプラント周囲疾患予防特集1QDI01_toku1.indd 342020/01/15 13:16©クインテッセンス出版(株)2020 Printed in Japan禁無断転載本冊子では、『Quintessence DENTAL Implantology』 2020年1号より、特集1「患者の人生主導型インプラント治療」を中心にダイジェスト版をお届けします。ダイジェスト見本誌超高齢社会の今、インプラント埋入後の患者の口腔内の変化に対応し、より良い口腔内環境を維持し続けるにはどうすればよいのか?定期購読&バックナンバーのご注文も大好評受付中!

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