ザ・クインテッセンス ダイジェスト見本誌2024
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°Tooth Axis 近年,歯科医療におけるデジタル技術の進歩は目覚ましい.それにともない,デジタルデンティストリーが注目されるなか,インプラント治療,補綴治療,矯正治療などにおいて口腔内スキャナー(以下,IOSと略)を用いた光学印象や,CAD/CAM,3Dプリンターを用いたサージカルガイド,補綴装置,矯正装置の製作などに広く応用されてきている. IOSでは,その精度や歯科治療の効率性の向上,そして経済性のメリットと同時に,現時点におけるいくつかのデメリットや知っておくべき注意事項もある.たとえば,従来のシリコーン印象法と同等の100μm以下の精度で印象が可能であると報告されている*1,*2が,フルアーチの固定性補綴装置を製作するにあたっての精度にはまだ不安があること,また歯肉縁下0.5mmより深い支台歯形成においては,光学印象後のフィニッシュラインの再現性が難しいことなどが挙げられる.審美補綴治療ではフィニッシュラインを歯肉縁下に設定することが多く,口腔内スキャナーで歯肉縁下の領域を光学印象することは現状では難しく,クリアなフィニッシュラインを読み取るためにはいくつかの工夫が必要になる. そこで,本稿では,当院で行っているハイブリッド方式によるIOSを応用したデジタルデンティストリーの実際の臨床を提示していきたい. 前述したように,歯肉縁下0.5~1.0mmの支台歯形成のフィニッシュラインをIOSで精密に読み取ることは難しい.そのため,歯肉縁下にフィニッシュラインを設定することが多い審美補綴でIOSを応用するには,いくつかの工夫が必要になる. 当院では,IOSによる上下歯列データ(図2b)と咬頭嵌合位でのバイトデータ(図2c)に,シリコーン印象で採取した支台歯の石膏模型データ(図2d)をマッチングするハイブリッド方式を採用している(図3~5).ハイブリッド法は,IOSの利点と歯肉縁下マージンに対応できる印象法の精密な再現力,優れた寸法精度を併せもつ.さらに,支台歯の模型を使用したマージン部の精密な適合調整と隣在歯とのコンタクトの確認と調整が可能となる.最終補綴装置の咬合面は,PVR形態の展開角をもとに(図6),咬合高径は,隣在歯の貫通量から135μm挙上し(図7),顎位の安定に必要な咬合接触点をポイントコンタクトで回復し,咬合面形態をデザインして補綴装置を完成させた(図8).田中秀樹*/兒玉邦成*1*福岡県開業 田中ひでき歯科クリニック*1歯科技工士 田中ひでき歯科クリニック10the Quintessence 2024 ダイジェスト見本誌咬合平面に咬合平面に対しての標準対しての標準的な傾斜角度的な傾斜角度Occlusal planeOcclusal plane*1.Takeuchi Y, Koizumi H, Furuchi M, Sato Y, Ohkubo C, Matsumura H. Use of digital impression systems with intraoral scanners for fabricating restorations and fixed dental prostheses. J Oral Sci. 2018;60(1):1‐7.*2.Rudolph H, Salmen H, Moldan M, Kuhn K, Sichwardt V, W?stmann B, Luthardt RG. Accuracy of intraoral and extraoral digital data acquisition for dental restorations. J Appl Oral Sci. 2016 Jan‐Feb;24(1):85‐94.はじめに審美補綴にデジタルデンティストリーをどう活用する?CASE:天然歯支台歯の歯肉縁下にフィニッシュラインを設定したケース審美補綴におけるデジタルデンティストリー―IOSを活用した新たな取り組み―補綴・デジタル歯科2022年11月号掲載

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