ザ・クインテッセンス ダイジェスト見本誌2024
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2the Quintessence 2024 ダイジェスト見本誌*1.EuropeanSocietyofEndodontology(ESE)developedby,DuncanHF,GallerKM,TomsonPL,SimonS,El-KarimI,KundzinaR,KrastlG,DammaschkeT,FranssonH,MarkvartM,ZehnderM,BjørndalL.EuropeanSocietyofEndodontologypositionstatement:Managementofdeepcariesandtheexposedpulp.IntEndodJ2019;52(7):923‐934.*2.AmericanAssociationofEndodontists.AAEPostionStatementonVitalpulptherapy.https://f3f142zs0k2w1kg84k5p9i1o-wpengine.netdna-ssl.com/wp-content/uploads/2021/05/VitalPulpTherapyPositionStatement_v2.pdf(2021年8月26日アクセス)*3.辺見浩一.ディシジョンツリーで考察する深在性う蝕における治療選択.theQuin-tessence2020;39(11):32‐61.辺見浩一東京都開業 恵比寿ヘンミデンタルオフィス患者説明は歯髄保存の1スキル 深いう蝕のある歯の歯髄を保存することは,われわれ歯科医師の命題であり,だれもがその重要性を認識している.近年,ヨーロッパ歯内療法学会(以下,ESE),米国歯内療法学会(以下,AAE)の2つの学会から歯髄保存治療のポジションペーパー(基本治療指針)が発刊され,徐々に根拠に基づいた手法が整理されてきている*1,*2. しかし,それでもなお歯髄保存治療は,診断から治療選択まで,さまざまな場面で“あいまい”な基準を許容しなければいけない治療分野であり,実際の臨床では,多くの場面で術者自身の裁量と患者の訴えによってその治療方針が決められている.このような背景があるからこそ,必要になるのが“患者説明のスキル”である.現在では,歯髄保存の有益な部分の情報のみが独り歩きしてしまい,患者に伝わってしまっている.一方でわれわれ歯科医師は,残せる歯髄,残せない歯髄があることを知っている.そして,歯髄保存だけではなく,抜髄も“歯”の重要な保存治療の1つである. 本稿では,このような情報の乖離を埋め,患者,歯科医師双方が納得のいく治療を選択し,最終的には“歯髄”を保存することだけを目的にするのではなく,“歯”の保存を目的とし,おいしく食事が摂れる口腔内を取り戻すために,どのように患者に説明し,治療を行っていくかを考察していきたい.深在性う蝕の治療がトラブルになりやすい問題点 これらのことから,症状の有無にかかわらず,治療介入を必要とし,その介入後の治療選択は歯髄保存から抜髄まで多岐にわたるのが深在性う蝕である.そのため,とくに症状が軽度の患者には,なぜその介入が必要なのか,なぜその治療選択をするのかを詳細に伝える必要がある(図1).ディシジョンツリーに則った患者説明 筆者は,この“診断”と“治療選択”が多岐にわたる,深在性う蝕における生活歯の治療において,ルートをたどることで,診断と治療選択を行うことが可能になるディシジョンツリーを考案し,臨床で応用している(ディシジョンツリーの詳しい解説は本誌2020年11月号を参照)*3. ディシジョンツリーは,Phase1~3に分かれている(図2).それぞれのPhaseで必要な患者説明について,解説していきたい.歯髄保存治療には,あいまいな基準が多い.患者と信頼関係を築き,術後のクレームを回避するうえでも,患者説明は必要なスキルの1つディシジョンツリーに則った歯髄保存の患者説明保存歯科(歯内療法)2021年10月号掲載

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