ザ・クインテッセンス ダイジェスト見本誌2024
6/12

6the Quintessence 2024 ダイジェスト見本誌 歯肉退縮に対する根面被覆術の治療結果の判定は,セメント-エナメル境(以下,CEJ)を基準として100%の根面被覆(Complete Root Coverage:CRC)を達成できたかどうか,あるいは露出根面を何割被覆できたかという“被覆率”に焦点が当てられるのが一般的である. 根面被覆率の平均値は,術式の改良や進化にともない年々高くなっており,正しい診査,診断の下,適切な手技を適用すればかなり予知性の高い治療となってきた(図1)*1.近年は,被覆率に加え,術後の軟組織の審美性も注目されており,より質の高い治療が模索されている. 2018年に行われたAAP(米国歯周病学会)/EFP(ヨーロッパ歯周病連盟)のワールドワークショップで発表された歯周病の新分類において,軟組織の審美についての評価が加えられていることからも,その関心の高さがうかがえる*2. 本稿では,昨今,論文等で頻繁に用いられている,根面被覆術の新たな評価方法である“Root coverage Esthetic Score(以下,RES)”の紹介と審美的結果を得るためのポイントおよび審美的合併症について述べたい. 根面被覆術の第一の目的は,当然であるが根面の被覆である.CEJまでの完全根面被覆を達成することは,患者の審美的満足を得るための重要な要素である.そのうえで,術後の歯肉の形態や表面性状,色調などが隣在歯と調和していることが望ましい. そういった視点で術後の審美性を客観的に評価し数値化したものがRESである(図2)*3. RESは,①辺縁歯肉の位置(GM:Gingival Margin),②歯肉縁形態(MTC:Marginal Tissue Contour),③表面性状(STT:Soft-Tissue Texture),④歯肉の色(GC:Gingival Color),⑤MGJの連続性(MucoGingi-val Junction Alignment)の5項目で評価され,計10点からなるスコアである. 根面被覆率の評価の比重は大きく,完全根面被覆の達成は10点中6点を占め,その他4項目は1点ずつ配点されている.審美的かつ完全根面被覆が達成された症例は10点となる.また,このRESは異なる術者,施設間でも再現性が高いことが報告されている*4.*1.ChambroneL,PratoGPP.Clinicalinsightsabouttheevolutionofrootcoverageprocedures:Theflap,thegraft,andthesurgery.JPeriodontol2019;90(1):9‐15.*2.CortelliniP,BissadaNF.Mucogingivalconditionsinthenaturaldentition:Narrativereview,casedefinitions,anddiagnosticconsiderations.JPeriodontol2018;89(1):S204‐S213.*3.CairoF,RotundoR,MillerPD,PratoGPP.Rootcoverageestheticscore:asystemtoevaluatetheestheticoutcomeofthetreatmentofgingivalrecessionthroughevaluationofclinicalcases.JPeriodontol2009;80(4):705‐710.*4.LeRochS,RoucheF,ValetF,BouchardP,ESCAPEgroup.Europeansurveyoncriteriaofaestheticsforperiodontalevaluation:TheESCAPEstudy.JClinPeriodontol2019;46(11):1116‐1123.尾野 誠京都府勤務 四条烏丸歯科クリニックはじめにRESの概要被覆率だけではない!根面被覆術の治療結果評価方法の“RES”とは?Root coverage Esthetic Scoreを用いた根面被覆術後の評価審美的結果を得るためのポイントと合併症への対応保存歯科(歯周病)2021年11月号掲載

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る