ザ・クインテッセンス ダイジェスト見本誌2024
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1特 集1特 集abcc7b図7b,c b:術前には₃₄₅₆にNCCLをともなうCairoの分類recession type1の歯肉退縮がみられた.c:外科処置に先立ち,CEJだと思われる位置までコンポジットレジン充填を行い,本来の歯冠を再現した.これにより根面被覆のゴールが設定される.b図6b,c 隣接面に付着の喪失があるが,唇側のアタッチメントロスのほうが大きい.そのため,Cairoの分類では,recession type2と診断した.CASE1VISTAテクニック+CTG (結合組織移植片をカバーフラップで完全に被覆した症例)図6a 患者は39歳,女性で非喫煙者.₃₄の歯肉退縮による審美障害を訴えた.図6d ₃₄ともにNCCLが存在し,₄には0.5mm以上の水平的な段差も存在した.術式選択のポイント 本症例の患者は審美的要求度が高く,また主訴の部位は審美領域であった.そのため,過剰な軟組織の増生による歯肉の瘢痕や,縦切開の跡等は可及的に避けたかった.角化歯肉幅は2mm以下,歯肉の厚みは1mm未満であり,隣接面の付着の喪失およびNCCLの存在を認めた.これらの状況からCTGの併用は必須と考えられた. 次にフラップデザインであるが,前歯部の叢生によりMCAFのデザインが難しく,乳頭に切開を加えないトンネルアプローチが適していると考えた.さらに歯肉が非常に薄いことから,歯肉溝からの剥離より,前庭部の切開から全層弁で剥離を行うVISTAテクニックが最適と思われた.MCAF+CTGによる根面被覆術◆上顎左側根面被覆術CASE2図6e図6f図6e 手術に先立ち,₄の本来CEJだと思われる位置でコンポジットレジン充填を行った.図6f コンポジットレジン充填後の状態.図7a 30代,男性.臼歯部に歯肉退縮を認めた.矯正治療を予定しており,今後歯列の拡大にともない歯肉退縮の悪化が予想された.そのため,歯肉退縮の治療と予防を目的とした根面被覆術とPMTを行うよう矯正医より当院に依頼された.術式選択のポイント 本症例は矯正治療前の根面被覆と軟組織増大によるPMTを目的としている.術後の歯肉に瘢痕が残らないよう結合組織移植片のサイズや位置づけには注意を払わなければいけない.結合組織移植片は必要最小限のサイズとし,移植片を完全に被覆するフラップデザインを採用した. また,審美領域であるため縦切開は避けたい.図6g ₂₃間の歯槽粘膜部に切開を加え,骨膜剥離子を用いて全層弁で剥離を行った.図6h 採取した結合組織移植片のサイズに過不足がないかを確認.図6i図6j図6i 本来のVISTAテクニック23は,スーチャーボンディングによりフラップを垂直的に懸垂するが,本症例は歯冠側移動させる範囲がそれほど大きくないため,通常の懸垂縫合を行った.図6j 術後1週間の状態.良好な治癒が確認できる.図7d 外科処置直前の状態.0.5mm~2mmの歯肉退縮を認める.図7e MCAFのフラップデザインで浅い切開(ライニング)を行った.GM:辺縁歯肉の位置0点:術前より悪いか術前と同等3点:部分的根面被覆6点:完全根面被覆MTC:歯肉縁形態STT:表面性状GC:歯肉の色MGJ:MGJの連続性図6k 術後1年の状態.完全根面被覆を達成できた.審美的な結果が得られている.図6l RESを用いた評価.スコアからも審美的に満足する結果が得られたことがわかる.38the Quintessence. Vol.40 No.11/2021—2690the Quintessence. Vol.40 No.11/2021—2692the Quintessence. Vol.40 No.11/2021—2693図7g 露出根面にエムドゲインを塗布.図7i図7j図7i 結合組織移植片は,カバーフラップで完全に被覆した.図7j 術後2週間の状態.複数歯に歯肉退縮を認め,各歯の歯肉退縮量の差は大きくないため,MCAFの乳頭切開の設定が容易である.トンネルアプローチも考えられるが,MCAFのようにエンベロープ状にフラップを開ける術式のほうがNCCLによる根面の段差を移行的にしやすい.図7k図7l図7k ₄は,わずかに歯肉退縮が残存しているが,その他の歯では完全根面被覆を達成している.図7l 歯肉の過不足ない自然なカントゥアを有している.図7f Zucchelli5が提唱している“全層-部分層弁”を形成し,乳頭部の上皮を除去している.図7m 術後1年4か月の状態.矯正治療が開始されているが,術後の状態を維持している.図7h 骨膜縫合を用いて,口蓋から採取した結合組織移植片を₃₄₅₆のCEJに位置づけた.GM:辺縁歯肉の位置0点:術前より悪いか術前と同等3点:部分的根面被覆6点:完全根面被覆MTC:歯肉縁形態STT:表面性状GC:歯肉の色MGJ:MGJの連続性図7n RESを用いた評価(₃₅₆).スコアからも審美的に満足する結果が得られたことがわかる(₄は部分的根面被覆のため,合計7点).0点:CEJに沿わないイビツな歯肉ライン1点:CEJに沿うスキャロップ状の理想的な40歯肉ライン0点:瘢痕やケロイドがある1点:瘢痕やケロイドがない0点:隣接歯と歯肉の色が異なる1点:歯肉の色が正常で,隣接歯となじんでいる0点:隣接歯のMGJと連続性がない1点:隣接歯のMGJと連続性があるthe Quintessence. Vol.40 No.11/2021—2691390点:CEJに沿わないイビツな歯肉ライン1点:CEJに沿うスキャロップ状の理想的な歯肉ライン0点:瘢痕やケロイドがある1点:瘢痕やケロイドがない0点:隣接歯と歯肉の色が異なる1点:歯肉の色が正常で,隣接歯となじんでいる0点:隣接歯のMGJと連続性がない1点:隣接歯のMGJと連続性がある4110101010the Quintessence 2024 ダイジェスト見本誌GM:辺縁歯肉の位置0点:術前より悪いか術前と同等3点:部分的根面被覆6点:完全根面被覆MTC:歯肉縁形態STT:表面性状GC:歯肉の色MGJ:MGJの連続性0点:CEJに沿わないイビツな歯肉ライン1点:CEJに沿うスキャロップ状の理想的な歯肉ライン0点:瘢痕やケロイドがある1点:瘢痕やケロイドがない0点:隣接歯と歯肉の色が異なる1点:歯肉の色が正常で,隣接歯となじんでいる0点:隣接歯のMGJと連続性がない1点:隣接歯のMGJと連続性がある9590858075706560555045401990根面被覆率の平均値(%)19921994図1 日々改良され,進化する術式とその根面被覆率の平均値を示すグラフ.取り上げられた論文すべての平均値を見ると,根面被覆率が徐々に上がっており,ますます予知性の高い治療となっていることがわかる(*1より引用・改変).Root coverage Esthetic Score(RES)図2a,b Root coverage Esthetic Score(RES).辺縁歯肉の位置,歯肉縁形態,表面性状,歯肉の色,MGJの連続性の5項目で評価され,計10点からなるスコアとなっている(*3より引用・改変).199619982000200220042006200820102012STT201420162018(年)MGJGCMTCGMSTT今日の根面被覆術の評価基準を多角的に解説さまざまな術式における根面被覆術の平均根面被覆率100(%)症例を基に根面被覆術の手技,ポイントも解説この論文を無料で全文読む!10

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