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2017年1月14日

薬剤関連顎骨壊死に関する医科・歯科連携コンセンサスミーティング開催

(一社)日本有病者歯科医療学会25周年記念シンポジウムとして盛大に

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 さる1月14日(土)、東京歯科大学水道橋校舎新館血脇記念ホール(東京都)において、「薬剤関連顎骨壊死に関する医科・歯科連携コンセンサスミーティング」(矢郷 香準備委員長)が、約220名の参加のもとに開催された。本シンポジウムは一般社団法人日本有病者歯科医療学会(今井 裕理事長)の25周年を記念して企画されたもので、昨年4年ぶりに改訂ポジションペーパーが作成され、医科歯科連携のうえでの対応が強く求められている薬剤関連顎骨壊死(以下、MRONJ)について相互理解を深めることを目的とし、医科歯科双方の演者を迎えての初の試みである。

 まず医科サイドから、高橋俊二氏(がん研究会有明病院総合腫瘍科部長)と太田博明氏(山王メディカルセンター女性医療センター長)が講演。高橋氏は「悪性腫瘍患者における骨吸収阻害薬の現状」について、乳がん等悪性腫瘍の骨転移を抑えるうえでビスホスホネート(以下BP)とデノスマブの高い有効性を、各種臨床試験の結果を交えて解説した。太田氏は「骨粗鬆症治療関連ONJの現状と今後の課題」と題し、BPによる治療率の向上が大腿骨骨折減少に大きく寄与したことを強調。休薬により骨折減少の兆しがみえた骨粗鬆診療に支障をきたしていることも紹介し、適切な医科歯科連携によって骨折とMRONJの防止に努めることが重要と訴えた。

 またランチョンセミナーでは、「骨粗鬆症治療におけるビスホスホネートの重要性」と題して、宗圓 聰氏(一般社団法人日本骨粗鬆症学会理事長)が講演し、健康寿命のさらなる延伸における骨折予防の意義を語り、その治療薬として高い有効性を示すのはBPの一部とデノスマブに限られることを紹介し、両薬による治療の必要性を強調した。

 続いて歯科サイドより、矢郷 香氏(国際医療福祉大三田病院歯科口腔外科部長)と岩渕博史氏(神歯大准教授)が登壇。矢郷氏は「薬剤関連顎骨壊死の現況とマネジメント -顎骨壊死予防のための医科・歯科連携とは-」と題し、多数の症例を提示したうえで、MRONJ発生時の患者のQOLの低下を強調。その予防として口腔衛生状態を良好にすることの意義を述べ、医科に対して治療開始前の歯科受診の勧奨を依頼した。岩渕氏は、日本有病者歯科医療学会が日本骨粗鬆症学会と連携で行った「骨粗鬆症患者における薬剤関連顎骨壊死に関するアンケート調査結果」から、「歯科処置がない場合でも顎骨壊死が生じた例が約2割存在」「52.8%で休薬したにもかかわらず、その約50%で発症」「治療中の医師との連携は約90%でとれていたものの、地域での医科歯科連携の取り組みは約50%に過ぎず不十分」等を報告し、さらなる連携の必要性を訴えた。

 さらに柴原孝彦氏(東歯大教授)が「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」についてミニレクチャーを行い、抜歯すべき歯を残すなど、口腔内に感染源を残すことの危険性を強調し、医科歯科の密接な連携により適切な歯科処置を行うことの重要性を訴えた。

 最後のパネルディスカッションでは、会場から多数の質問が寄せられ、現場における関心の高さがうかがわれた。何よりも患者が不利益を被らないために、医科歯科が連携して取り組むことが重要であり、さらなる進展が期待される。