2021年5月16日掲載

長谷剛志氏、戸原 玄氏、野原幹司氏が摂食嚥下を考える

Doctorbook academy 1DAY LIVEセミナー開催

Doctorbook academy 1DAY LIVEセミナー開催
 さる5月16日(日)、Doctorbook academyにて「摂食嚥下ディスカッションLIVE~これからの老年社会に備えて~」をテーマに1DAY LIVEセミナーがオンラインにて開催された。

 はじめに、長谷剛志氏(公立能登総合病院・歯科口腔外科部長)が「訪問診療で伝える!使える!高齢者『口腔ケア』の道しるべ」の題で講演。目的が曖昧な口腔ケアは患者や家族、さらには介護者など関係職種、医療従事者を疲弊させてしまうため、歯科医師がコントロールタワーとして“行き先(ゴール)”を定めることが大事だと示した。そのために必要な道しるべとして「臨床的背景に配慮する」「自浄作用を評価する」「対象者のトリアージ」「実践的機能評価のポイント」の4つを挙げ、それぞれ詳説した。

 続いて、戸原 玄氏(医歯大教授)が「今こそ知りたい!摂食嚥下障害」と題し、摂食嚥下=訓練というイメージがあるが、ただ訓練をすればいいというわけではなく、「嚥下機能ではなく、嚥下障害患者を考える」重要性を強調した。摂食状況と栄養形態の不一致など嚥下状態が見過ごされてきた症例を紹介したうえで、検査ありきで安全を最優先するだけでなく、患者の安心・快適、希望、自由をどう考えていくかが大事とし、目の前の患者を取り巻く環境を観察するための視点を紹介した。

 最後に、野原幹司氏(阪大准教授)が「歯科が行う嚥下リハ~治らない嚥下障害への対応~」と題し、登壇。これからの歯科医療では、がんや脳卒中、心臓病などを乗り越えた患者の機能障害・摂食嚥下障害をみていくようになると主張。特に、嚥下訓練で治らない認知症の嚥下障害が多く、「キュアからケアへ、訓練から支援へ」と視点を変えた対応が求められると説いた。そのうえで、代表的な「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」について、特徴や嚥下の症状、見極め方を解説した。

 最後のディスカッションは、参加者からの質問をもとに、高齢者医療において注意すべきこと、コロナ禍における診療の留意点などをテーマに展開された。そのなかで摂食嚥下障害をみるにあたり歯科衛生士に求められることとして、患者や家族との関係づくり、食事だけでなく服薬状況の確認が挙げられた。厚生労働省がとりまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針」において歯科衛生士に剤形や服用方法などを確認することが求められていることにもふれ、そのような歯科衛生士を輩出できる歯科界にしなければ、と強く訴えかけた。

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