2022年9月2日掲載

「世界を先導する歯周病学を目指して」をテーマに

日本歯周病学会、第65回秋季学術大会を開催

日本歯周病学会、第65回秋季学術大会を開催
 さる9月2日(金)、3日(土)の両日、仙台国際センター(宮城県)において、第65回秋季日本歯周病学会学術大会(山田 聡大会長、小方頼昌理事長)が「世界を先導する歯周病学を目指して」をテーマに開催され、人数制限および感染対策の下、歯科医師、歯科衛生士ら1,000名超が参集し、盛会となった(9月20日(火)から10月20日(木)予定でオンデマンド配信)。

 初日はまず、大会長の山田氏(東北大)が開会の挨拶後、医療安全委員会企画講演として、新田 浩氏(医歯大)の座長のもと、大毛宏喜氏(広大)が「サイレントパンデミック時代を迎えて」と題して登壇。薬剤耐性の問題が取りざたされるなか、近年増加している耐性菌の1つであるESBL産生菌について解説。また、抗菌薬の供給難の問題にもふれ、国策として薬剤の国産化や新薬開発の促進を行う必要性について述べた。

 特別講演1「東北メディカル・メガバンク計画と未来型医療への挑戦」では、山田 聡氏の座長のもと、山本雅之氏(東北メディカル・メガバンク機構)が登壇。東日本大震災で大きなダメージを受けた東北地方の創造的復興の実現に向けてスタートした東北メディカル・メガバンク計画が、地域住民コホートと三世代コホートを戦略的に組み合わせて実施している大規模前向きコホート調査の概要やその意義、今後の展開などについて解説した。

 シンポジウム1「AIが拓く医療の近未来」では、村上伸也氏(阪大)の座長のもと、中澤 徹氏(東北大)、アサン・バドルル氏(株式会社フィリップス・ジャパン)、土井千章氏(株式会社NTTドコモ、東北大)、野崎一徳氏(阪大)がそれぞれ講演。なかでも土井氏は、「歯周病発見AIの研究開発及び社会実装に向けた取り組みについて」と題して登壇し、スマートフォンで撮影した画像やアンケートを基にAIで歯周病のリスクを検知する研究開発について紹介した。

 シンポジウム2「歯周組織の分子基盤―疾患形成・病態の解明と臨床への応用―」では、山田 聡氏の座長のもと、山城 隆氏(阪大)、山田将博氏、鈴木茂樹氏(ともに東北大)がそれぞれ講演。なかでも山田将博氏は、「生体模倣ナノ表面インプラントによるin situ歯周組織再生」と題して登壇し、歯周靭帯が残存する歯槽骨にセメント質模倣表面改質を施したチタンインプラントを埋入すると歯周組織がin situ組織再生する可能性などについて解説した。

 2日目の歯科衛生士教育講演では、小田 茂氏(医歯大)の座長のもと、星 嵩氏(新潟県開業)が「使ってみよう! 歯周病の新分類」と題して登壇。米国歯周病学会とヨーロッパ歯周病連盟の新分類の特徴と、新分類における歯周病の診断基準について症例を交えながらわかりやすく解説した。

 シンポジウム3「EBMに基づいた歯周組織再生療法の現在と未来」では、江澤康博氏(東京都開業)、北村正博氏(阪大)の座長のもと、北村氏、中山洋平氏(日大松戸)、大月基弘氏(大阪府開業)がそれぞれ講演。なかでも大月氏は、「臨床から歯周組織再生療法の未来を見つめる」と題し登壇し、FGF-2と結合組織移植術を併用して根面被覆と歯間乳頭再建を行った症例などを提示した。

 認定医・専門医教育講演では、山本松男氏(昭和大)の座長のもと、林 丈一朗氏(明海大)が「歯周炎患者へのインプラント治療」と題して登壇。インプラント周囲炎のリスクファクターとその対応について解説するとともに、数多くの症例やイラストを供覧しながら、歯周炎患者に対するインプラント治療のポイントを紹介した。

 そのほかにも、一般演題口演やポスター発表などが行われ、終始賑わいを見せていた。なお、次回の第66回春季学術大会は、きたる2023年5月26日(金)、27日(土)の両日、レクザムホール(香川県)ほかにて、湯本浩通大会長(徳島大)のもと、「『歯周病』を語ろう! ~その原点から未来へ~」をテーマに開催予定。

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