2022年9月23日掲載

「摂食嚥下のSDGs」をテーマに

日本摂食嚥下リハビリテーション学会、第28回学術大会を開催

日本摂食嚥下リハビリテーション学会、第28回学術大会を開催
 さる9月23日(金)、24日(土)の両日、幕張メッセ(千葉県)において、第28回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会(倉智雅子大会長、鎌倉やよい理事長)が「摂食嚥下のSDGs」をテーマに、現地と一部のプログラムのみWeb配信にて開催された。

 会場では、2019年に舌がん手術を受けた堀 ちえみさん(歌手・女優)が登壇した特別講演のほか、教育講演、海外招待講演、シンポジウム、パネルディスカッション、市民公開講座、各種セミナーなど、2日間にわたって多彩なプログラムが展開され、立ち見の出る会場も見られた。また、各講演には大会テーマに掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)の「17のゴール」に即したカテゴリーが設定された。

 なかでも1日目の公募シンポジウム1「災害時の摂食・嚥下障害者に対する多職種での『食べる』支援~実践経験からの体制構築~」では、医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士によるこれまでの東日本大震災や熊本地震における災害現場での対応などが供覧された。また、平時からの職種間の垣根を超えたトランスディシプリナリーアプローチの必要性が強調され、まさに大会テーマにマッチした多職種によるシンポジウムが展開された。

 また、シンポジウム6「誰一人取り残さない 摂食支援 介護の現場から」では、看護師、歯科衛生士、言語聴覚士、理学療法士の各職種からの視点で講演が行われた。「口にかかわり食べるを支える」と題するテーマで登壇した文字山穂瑞氏(歯科衛生士、東京西の森歯科衛生士専門学校)は、要介護高齢者において残存歯が増え、インプラントや義歯による口腔内の複雑化、根面う蝕、口腔乾燥などの問題について紹介したうえで、健康時から口腔ケアの重要性を訴えていく必要性を説いた。さらに、在宅現場では多職種連携により家族や患者の思いに寄り添うことができる可能性を症例とともに提示した。

 交流セミナーでは「他職種に知ってほしい〇〇」と題し、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、看護師、保健師の各職種が伝えたいテーマで講演が行われ、本学会ならではの他職種同士の理解につながる共有の場となった。

 2日目は、市民公開講座「空飛ぶ嚥下食:だれ一人取り残さない航空業界の取り組み」が行われ、日本航空(JAL)グループは「アクセシビリティ」、全日本空輸(ANA)グループは「ユニバーサル」をキーワードとし、嚥下障害者でも食べることができるような機内食への開発の取り組みなどが披露された。

 また、教育講演10「オーラルフレイル予防戦略~コホート研究の成果から世の中に何を伝えるのか~」では、飯島勝矢氏(東大高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター)が登壇。課題解決につながる大規模研究から産・官・学・民協働による実証をとおした継続性の大切さなど、現場を重視した提言がなされた。

 なお、次回の第29回学術大会は、きたる2023年9月2日(土)、3日(日)の2日間、パシフィコ横浜ノース(神奈川県)において開催予定。

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