2022年9月23日掲載

英語による2演題を含む、10演題が並んだ1日

日本臨床歯科学会、第7回学術大会・総会をWeb配信にて開催

日本臨床歯科学会、第7回学術大会・総会をWeb配信にて開催
 さる9月23日(金)、日本臨床歯科学会第7回学術大会・総会(山崎長郎大会長・理事長)が、お茶の水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)からのWeb配信にて開催された。配信会場には、同学会各支部の支部長や理事ら70名超が集まり、あらかじめ決められた席次に着席するなど徹底した新型コロナウイルス感染症感染対策のうえで行われた。Web視聴の一般会員は約750名であった。

 本会に先立ち総会が行われた後、開会式が開催され、午前中は理事長講演と基礎研究講演4演題の計5講演が、午後は臨床講演4演題と教育講演の計5演題がそれぞれ行われた。

 まず、山崎氏(東京都開業)による理事長講演「気道を考慮した新たなる補綴治療の視点 ~新しいマージン設定コンセプト(MTAP)~」が行われた。山崎氏は、1970年代からのナソロジーや歯周補綴、そしてスウェディッシュペリオといった各年代における歯科治療のコンセプトの推移について紹介。その歴史をふまえ、この2020年代は「エアウェイデンティストリー」の時代であると述べたうえで、口腔内装置の活用や、舌側咬頭を付与しないことによる舌房の確保などを含む、気道の確保を意識した臨床例を3例供覧した。

 午前中の基礎研究の講演では、山口文誉氏(神奈川県開業)が研究チームを代表して登壇し、「日本人歯科受診者の2018年AAP/EFP歯周炎新分類による歯周炎の有病率と重度歯周炎患者(ステージⅢ・Ⅳ)の割合に関する多施設共同断面研究」のテーマで、歯周炎の旧分類と新分類の違いから解説をはじめ、国内12施設で初診患者を対象として日本人における歯周炎の有病率等について研究した成果を解説した。

 その後、内藤聡美氏(東京都開業)が登壇し、「矯正歯科治療を開始した中高年患者における下顎前歯叢生と歯肉退縮の関係について」のテーマで、これまで報告のみられなかったという40歳以上の中高齢者における叢生と歯肉退縮の関係の研究報告を行った。

 午前の後半の2講演は、通訳なしですべて英語での講演という試みがなされた。まず、山本恒一氏(大阪府開業)が、「The effect of interproximal distance on the accuracy of digital impressions for laminate veneers: preparation design of interproximal spaces」のテーマで、口腔内スキャナーによるスキャン時に確保するべき隣在歯間の距離について講演し、その後、綿引淳一氏(東京都開業)が「Optimized periodontal regeneration for orthodontics(O-PRO):a case series」のテーマで、矯正歯科治療に併用する硬軟組織造成に関する術式について講演した。

 午後は、まず、吉田茂治氏(埼玉県開業)が「歯列狭窄をともなう閉塞性睡眠時無呼吸患者へ行った咬合再構成の一例」のテーマで、理事長講演に続き睡眠時無呼吸症候群患者の症例を供覧した。次に、中村茂人氏(東京都開業)が「フェイシャルパターンを考慮し咬合高径を決定した一症例」のテーマで、再矯正で咬合高径の決定に悩まれた症例を供覧した。その後、大森有樹氏(大阪府開業)が「前歯部開咬をともなう重度歯周炎患者に矯正・インプラント治療を行った一症例」のテーマで症例を供覧し、中等度~重度の歯周病患者については炎症のコントロールだけでなく、力のリスク診断に基づく力のコントロールが重要であると強調した。また、菊池大輔氏(福岡県開業)が「歯冠形態と歯肉レベルを変更することによって前歯部審美障害の改善を行った一症例」のテーマで、本会唯一の前歯部の症例を供覧した。

 最後に、伊藤雄策氏(大阪府開業)による教育講演「エビデンスに基づいたインプラント補綴治療」が行われ、インプラントが人体にとって異物であることを前提に、どのように治療に活かしていくべきか症例を供覧しながら解説した。

 各講演後には毎回質疑応答の時間が設けられ、ディスカッションが非常に活発に行われるなどし、盛会のうちに閉会した。

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