2022年10月12日掲載

吉松繁人氏、奥野幾久氏が「無歯顎補綴の治療戦略―咬合採得を理解する―」をテーマにWeb講演

クインテッセンス出版株式会社、第30回WEBINARを開催

クインテッセンス出版株式会社、第30回WEBINARを開催
 さる10月12日(水)、吉松繁人氏(福岡県開業)、奥野幾久氏(大阪府開業)によるWEBINAR #30「無歯顎補綴の治療戦略―咬合採得を理解する―」(クインテッセンス出版主催、北峯康充代表取締役社長)が開催された。本セミナーは、両氏が本年7月に上梓した『無歯顎補綴の治療戦略 総義歯とインプラントを用いた難症例へのアプローチ』の内容をベースに行われた。

 吉松氏は冒頭、無歯顎補綴治療を行ううえでの心構えについて言及し、「患者さんが違和感なく噛める義歯を製作するには、咬合平面や顎間関係を十分に見極めることが重要」と述べた。また、基本的な咬合堤に当てはめようとせず、デンチャースペースや垂直的顎間関係を十分に精査したうえで義歯を製作することの大切さを強調。あわせて、根幹となる咬合採得の目的について、「機能的、生理学的に正常な上下顎骨の三次元的位置関係を再現し、その位置におけるデンチャースペースを記録すること」と解説し、本講演の導入とした。

 次に、垂直的顎間関係の決定について、機能的かつ審美的な問題の有無を基準とした対処方法をチャートに示しながら供覧。なお、咬合高径を調整する必要がある場合は、最適な垂直的高さに調節するためにプロビジョナルレストレーションを利用することを推奨した。そして、垂直的顎間関係を決定する際の重要ポイントとして特に、1)舌と下顎の歯列で構成される咬合平面、2)舌と口蓋との距離――の2点を挙げるとともに、咬合採得のエラーをなくすための上下顎模型や上下印象体の着眼点についてもふれた。

 続いて、奥野氏が下顎位と咬合採得、特にゴシックアーチのポイントについて講演。まず、ゴシックアーチ描記法における基礎知識や採得原理について解説した。なかでも、描記針と描記板の上下の配置について、上下顎の安定性の基準から症例によって使い分けることを推奨した後、症例を供覧しながら各手順における正確な咬合採得を行うための注意点について詳説した。

 最後は、無歯顎補綴治療のゴール(メインテナンスへの移行基準)について最適な顎間関係を評価する基準として、1)スムーズな開閉口運動、2)偏心運動時の円滑な滑走、3)片側性咬合平衡の確立、4)タッピングポイントの収束と咬合面の均等なバランス――の4つを説き、示唆に富む内容を披露した。

 講演後の質疑応答では、ボーンアンカードブリッジの咬合採得について質問が寄せられ、吉松氏は「1回の咬合採得で正確なバイトを決めるのは難しい。複数回のプロビジョナルレストレーションで微調整した後、リマウントを行い慎重に顎位を決定してもらいたい」と、ていねいに解説した。また、奥野氏にはインプラント埋入後の総義歯の調整についての質問が寄せられ、暫間インプラントに義歯を即時荷重させる方法など難しいケースのリカバリーも含め回答した。

 両者の講演とも、無歯顎補綴治療を行うに際しての重要なポイントがアピールされ、盛会となった。

 なお、次回のWEBINAR#31は、きたる10月20日(木)、松村香織氏(福岡県勤務)を招聘し、「一般歯科診療所でも大丈夫! 病気をもった高齢者の観血的歯科治療への対応」が開催予定である。申し込みはこちらから。

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