2022年11月27日掲載

唾液をテーマに多職種が講演を行い盛会となる

第1回日本唾液ケア研究会学術集会が開催

第1回日本唾液ケア研究会学術集会が開催
 さる11月27日(日)、第1回日本唾液ケア研究会学術集会(日本唾液ケア研究会主催、槻木恵一理事長)が、神奈川県歯科保健総合センター(神奈川県)およびWeb配信のハイブリット形式で開催された。日本唾液ケア研究会は、唾液の健康効果を科学的に明らかにし、臨床応用への取り組みの推進や健康効果の啓発を目的に、口腔の健康から全身の健康を目指す団体である。

 開会後、槻木氏による基調講演「唾液ケア外来の基本コンセプトと認定制度の構築に向けて―国民皆歯科健診を見据えて―」が行われた。槻木氏は、唾液の作用について消化作用や粘膜保護、食塊作用など多岐にわたる役割を紹介した後、それら作用を2つの機能に分類し量と質の観点から評価した「唾液力」(唾液の作用)を解説。唾液は24時間口腔を防衛する役割を果たしながらも、生体因子への関心が薄い現状を打開すべく「唾液力」を高める行動を唾液ケアと定義し、「唾液力の強化が口腔の健康ひいては全身の健康へつながることを国民に周知するとともに、健康の維持に貢献したい」との思いが述べられた。

 続いて、斎藤一郎氏(鶴見大前教授、ドライマウス研究会代表)による特別講演「唾液分泌から考える全身の健康科学」が行われた。斎藤氏は、口は機能として食べる、話す、笑う、歌うなどの生活していくうえで欠かせない役割を担い、これら機能が低下すると全身状態の虚弱(フレイル)へつながることから、口の機能を維持するうえで唾液が重要なはたらきをしていることを概説した。また、多剤併用の副作用の影響もあり、特に高齢者に多いドライマウスによる口腔内細菌叢が乱れる弊害についても言及。口腔内の細菌が腸内で増殖するとクローン病や潰瘍性大腸炎を誘発させ、腸そして全身に大きな影響を与えることを説明した。あわせて糞便移植によって潰瘍性大腸炎やうつ病が改善された事例をはじめとする腸と脳の相関を示唆する研究も紹介した。

 「いい唾液の日記念イベント」では、唾液に関する優秀な研究成果を発表した研究者に対し槻木氏より表彰式が行われ、岩橋亜希氏(管理栄養士、新田歯科クリニック)、佐藤しづ子氏(東北大病院総合歯科診療部助教)、高橋 茂氏(北大大学院歯学研究院口腔機能解剖学教室准教授)、井 隆司氏(長崎大大学院医歯薬学総合研究科先進口腔医療開発学分野助教)の4名が受賞した。

 その他にも、Topics講演、一般講演、ランチョンセミナー、シンポジウム、フォーラム、ポスター討論など多岐にわたるプログラムにて歯科医師や大学人以外にも管理栄養士や看護師、医師とさまざまな職種の演者による講演が行われ、企業展示ブースも含め盛会となった。管理栄養士の歯科への介入事例や健康を守るうえで唾液と関連性の高い研究、唾液を利用したがんのスクリーニング研究など唾液に関連したテーマでさまざまな視点から発表が行われ、唾液研究に対する関心の高さがうかがえた。

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