2023年2月17日掲載

塚崎雅之氏が「歯科臨床のための骨免疫学」をテーマに講演

令和4年度 第4回渋谷区歯科医師会学術講演会開催

令和4年度 第4回渋谷区歯科医師会学術講演会開催
 さる2月17日(金)、渋谷区文化総合センター大和田(東京都)において、令和4年度 第4回渋谷区歯科医師会学術講演会(公益社団法人渋谷区歯科医師会主催、木下滋彦会長)が開催され、同会のメンバーを中心に約40名が参集した。

 今回の講師は、骨免疫学の分野で新進気鋭の研究者である塚崎雅之氏(東大特任助教)。歯科の臨床において、歯周治療やインプラントをはじめ、骨の存在は切り離せない。今回の講演「歯科臨床のための骨免疫学」は、日常臨床と基礎研究を結びつける内容であった。

 講演は4つのトピックで構成され、1つ目は「歯周病のメカニズム最前線」。歯周病も骨が深くかかわる疾患だが、まずはその最新の病因論をおさらいすべく、P.g.菌単体が原因で歯周病が起こるわけではなく、常在菌が悪さをする方向にP.g.菌が誘導する――つまり、P.g.菌は「キーストーン病原体」であることを説明した。

 2つ目は「口腔―全身連環の歴史と最前線」。古くはヒポクラテスによる観察報告(状態の悪い歯の抜去により患者の関節炎が改善した)からはじまり、1800年代後半に口腔細菌学の父ミラーが提唱した概念や、「Cell」誌掲載の最新論文(歯周病により発生したTh17細胞が腸に入り込んで炎症を起こし、クローン病や大腸炎を悪化させる可能性がある)まで、口腔―全身連環の考えの変遷を語った。

 休憩をはさんで3つ目のトピックは「メカニカルストレスと歯科臨床」。咬合性外傷や骨隆起、インプラント埋入後の非細菌感染性の骨壊死をはじめ、力と骨が関係する臨床所見について、破骨細胞や骨芽細胞、骨細胞のはたらきから解説がなされた。なかでも骨細胞が分泌する「スクレロスチン」は、骨芽細胞による骨再生を抑制する作用をもつが、この物質のはたらきを抑えることで、骨粗しょう症の治療薬である「ロモソズマブ」は骨再生を促しているという。

 最後の4つ目は「『骨膜』と歯科臨床」。骨の表面にある骨膜には、骨をつくる幹細胞が豊富に存在する。この骨膜幹細胞は骨再生に関与する可能性があり、腫瘍に対する生体防御機構も備えている。こうした理由から、氏は現在、骨膜のはたらきに注目しているとのこと。

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