2023年5月11日掲載

「分野を越えた口腔科学」をテーマに

NPO法人日本口腔科学会、第77回学術集会を開催

NPO法人日本口腔科学会、第77回学術集会を開催
 さる5月11日(木)から13日(土)の3日間、岡山コンベンションセンター(岡山県)において、第77回NPO法人日本口腔科学会総会・学術集会(浅海淳一大会長、片倉 朗理事長)が開催された。本学会は日本医学会に属する唯一の歯科系の分科会であり、特別講演2題、シンポジウム7題、教育研修会、口演発表、ポスター発表などが行われた。

 「特別講演 Stomatologyを考える」では、大会長の浅海氏(岡山大教授)が、歯科系の学会として110年の歴史を誇る日本口腔科学会の成り立ちと変遷、自身のネットワークなどにより調べた諸外国のStomatology(Oral Medicine)の状況について報告。そのうえで、歯科学を含む学際的な領域を包括する総合内科的な役割を担い、医学と歯学の橋渡しに貢献する本学会としての意義や今後について述べた。また、これに関連して関係する口腔診断学会、口腔内科学会、口腔外科学会を代表したシンポジストを迎え、StomatologyおよびOral Medicineについて、その概念や連携の在り方、今後の展望などを協議するシンポジウムが行われた。

 「シンポジウム エンドオブライフケアに貢献する歯科医療とは?」では、まず平原佐斗司氏(医師、東京ふれあい医療生活協同組合研修・研究センター長)が「エンドオブライフケアの視点から歯科に対する期待」と題した講演で、認知症や心不全、腎不全など、増加する高齢非がん患者の緩和ケアにおける最大の課題は「摂食・嚥下障害への対応」と「呼吸困難の緩和」であると指摘。末期でも患者の快適に食を楽しむという目標を実現するうえで、これらの課題に応えるために口腔ケアの重要性を強調し、歯科の早期からのかかわりが不可欠と述べた。

 続いて、森光 大氏(管理栄養士、川崎医大総合医療センター栄養部)が「最期まで美味しく楽しく食べていただくために」として、友人の看取り期まで食べるにかかわった経験を交えながら、「食べること」を支援する立場から、残された時間のなかで、口腔内の問題に対応して美味しく感じて食べてもらうために、歯科医師もぜひ参画してほしいと訴えた。

 最後に李 昌一氏(神歯大教授)が「エンドオブライフに貢献する経口支援による歯科医療の可能性」と題した講演で、全身疾患との関連性がある歯周病や摂食嚥下障害について、歯科における予防・治療法や検査法が、エビデンスをもとに医科も納得した形で導入されることが、本当の医科歯科連携につながるのではとの見解を述べ、自身の取り組みとして、唾液を用いた医科歯科連携に役立つ検査・治療法の開発研究を進めていることを紹介した。

 そのほかにも、口腔組織再生、口腔常在菌と全身疾患、デジタル時代をふまえた顎変形症治療、歯科インプラントの骨移植・表面性状、顎下隙をテーマとした口腔外科医・歯科放射線医・口腔解剖学者によるカンファレンスなど、多彩な企画によるシンポジウムが展開された。また、4大会ぶりに一般口演やポスター討論も現地で行われ、多数の参加者が来場した。

 次回第78回学術集会は、きたる2024年7月20日(土)、21日(日)の2日間、東京大学(東京都)において開催予定となっている。

関連する特集