2023年6月10日掲載

「予防の時代から定期継続管理の時代へ~『か強診』をいかに定着させていくか~」をテーマに

予防歯科シンポジウム&“か強診”サミット開催

予防歯科シンポジウム&“か強診”サミット開催
 さる6月10日(土)、11日(日)の両日、沖縄コンベンションセンター(沖縄県)において、予防歯科シンポジウム&“か強診”サミット(笠原一規大会長)が「予防の時代から定期継続管理の時代へ~『か強診』をいかに定着させていくか~」をテーマに開催された。

 2日間にわたり、特別講演2題、ランチョンセミナー2題、8つのセッション、シンポジウム1題の他、「“か強診”サミット」としては12のセッションが行われた。また、康本塾(康本征史主宰)のメンバー10名によるリレー講演や、2日目には5名の演者によるシンポジウム「人生100年時代における歯科医院の在り方」が開かれた。台風3号の影響が懸念されるなかにもかかわらず、参加者約500名を集め盛り上がりを見せた。

 特別講演1では、丸茂義二氏(日歯大名誉教授)が「発達障害に歯科ができること」と題するテーマで講演。発達障害の子をもつ保護者の悩みには、子の運動音痴(外で遊びたがらない)、無感情、学習障害などがある。それらが歯科的なアプローチで改善した事例が示された。たとえば、顎や舌機能の発達が遅れ、それが運動能力の低下につながっている子には、うま味が強く軟らかい食事に食形態を変更することで、舌の動きが促される。すると、遅れていた顎の成長が促され、呼吸の改善や脊椎の安定が起こり運動能力が上がる。また口腔内装置を利用して口呼吸や舌の位置を改善することで、表情筋が動きやすくなって無感情が変わったり、視機能が良くなって学習障害が改善した症例を供覧した。

 特別講演2では、中村正人氏(沖縄県うるま市長)が登壇。「人口12万6千人の地方都市で模索する医療連携について」と題するテーマで、うるま市の概要と将来像、子育て支援の取り組みにくわえ、現在抱えている問題点を概説した。昨年、同市では「うるまこどもステーション」を開設し、発達に問題を抱える小児を医療と福祉から支援している。同ステーションには専門家が常駐し、保護者が子を遊ばせながら、気軽に発達発育の相談ができる仕組みになっている。

 シンポジウム「人生100年時代における歯科医院の在り方」では、高橋伸治氏(香川県開業)、生田図南氏(熊本県開業)、荒井昌海氏(東京都開業)、康本氏(千葉県開業)が登壇。高橋氏は、「デンタルフィットネス」という、患者の健康づくりをサポートしながら経営の安定や収益改善などを実現する予防歯科の体系的なシステムの提唱者。予防一筋33年の経験から、事業継承を意識した予防歯科中心の体制づくりのノウハウを述べた。

 生田氏は、過疎化が進行している熊本県天草市で歯科診療を行い、地域の人々を支えている存在。人口減少地域でどのように診療にあたり収益を上げていくかについて、訪問歯科診療を軸に据えた実例を紹介した。

 荒井氏は、東京を中心に約10の分院を展開している。自動精算機や3Dプリンターなどのデジタル機器を積極的に導入し、多くの業務をシンプル化・オートメーション化することで、効率化を実現している取り組みを解説した。

 講演のトリを務めた康本氏は、2040年に予想される社会の変化に対応すべく、国の政策の方向性を理解し、それに合わせて医院が進む道を明確にする必要性を述べた。最後は「2040年の時代はいままでの連続ではない。働き手自体が大きく減るため、何をやらないか、何を残すかを考えなくてはならない」との言葉で締めくくった。

 1日目の講演後には懇親会が開かれ、約200名の演者・歯科医療者が一堂に会した。旧交を温める者もいれば、医院づくりについて活発な情報交換を行う者もあり、非常に盛り上がりを見せた。なお、講演の一部は6月21日(水)からオンデマンド配信される(シンポジウム参加登録者は無料)。視聴申込はこちらまで。

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