2023年10月19日掲載

「がん診療、一気通貫 ―力を合わせて、相乗効果―」をテーマに

第61回日本癌治療学会学術集会が盛大に開催

第61回日本癌治療学会学術集会が盛大に開催
 さる10月19日(木)から21日(土)の3日間、パシフィコ横浜(神奈川県)において、第61回一般社団法人日本癌治療学会学術集会(大家基嗣大会長、土岐祐一郎理事長)が開催された。本学会は会員数17,000名を超える最大のがん専門の学術団体であり、特別企画シンポジウム8題、特別企画ワークショップ14題、領域横断的シンポジウム11題、領域横断的ワークショップ11題、臓器別シンポジウム17題、臓器別ワークショップ17題などのセッションのほか、医学以外の専門家による講演、一般口演、eポスター発表など、多彩なメニューで展開された。

 口腔領域の臓器別シンポジウムとして企画された、「最新ガイドラインに学ぶ! 超高齢化社会の口腔癌治療」(座長:上田倫弘氏、北海道がんセンター医長/青木隆幸氏、東海大准教授)では、希少がんとされる口腔がんについても、近年高齢患者が増えている現状をふまえ、日本口腔腫瘍学会にて作成中の高齢口腔がん患者の治療ガイドラインを受けて開催。まず長島文夫氏(医師、杏林大教授)より、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)による患者の身体的・精神的・社会的機能を評価することの意義や、患者の意思決定支援の重要性を説明。続いて高齢口腔がん患者の治療に関し、柳本惣市氏(広島大教授)より手術療法、三浦雅彦氏(医歯大教授)より放射線療法、本間義崇氏(医師、国立がん研究センター中央病院医長)より薬物療法、山田有佳氏(慶応大助教)より支持療法について解説。特にプレフレイルにある高齢患者への対応の確立と、治療に関するさらなるエビデンスの蓄積の必要性が強調された。

 同様に口腔領域のシンポジウムとして開催の「どこまで残せる? 口腔表在癌に対する治療戦略」(座長:柳下寿郎氏、日歯大教授/山城正司氏、NTT関東病院部長)では、舌がんでの表在性病変の診断・治療について、道 泰之氏(医歯大准教授)より外科療法、野村武史氏(東歯大教授)より光学機器を用いた表在性病変の可視化、莇生田整治氏(慶応大病院副部長)より全周術中凍結切片解析(e-IFSA)を用いた切除範囲の決定法、八木原一博氏(埼玉県立がんセンター部長)より超音波を用いた診断と治療、石川文隆氏(埼玉県立がんセンター副部長)より病理診断の現状と問題点について講演。各演者からは、早期対応が重要である表在性段階での診断と治療についての取り組みが紹介された。そのなかで野村氏は、光学機器を用いた診断は一般歯科診療においても手軽に使用できる非侵襲的な手段として、今後の普及が期待されるとの見解を述べた。

 本学術集会では、死亡原因の第1位であるがんに対して、専門性の垣根を超えて最新の知見や技術などを学ぶ絶好の機会として、治療にかかわる全国の関係者がいっせいに集い、多くの会場が参加者の熱気であふれていた。

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