2023年12月21日掲載

外部講師に菊谷 武氏を招聘

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催
 さる12月21日(木)、S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会、中尾 祐会長)によるWebセミナーが開催され、歯科医療関係者を中心に70名以上が参加した。

 今回は外部講師として招聘された菊谷 武氏(日歯大教授、同大口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)による特別講演「要介護者にとって歯はないほうがよいのか―高齢者歯科パラドクス―」が行われた。

 冒頭、菊谷氏は、多くの日本人が75歳前後を境に、要介護状態まで自立度が低下していく老化の過程についてグラフを示しながら解説。健康寿命と平均寿命の差が男性で8.73年、女性で12.07年であることから、けっして短くない通院不可能な期間があることを説明し、口腔機能検査からフレイルリスクを診断することで、来院可能な期間を延ばす取り組みの重要性について述べた。

 次に、「残存歯数と生命予後の関係性」について、菊谷氏は残存歯数が多い方が生存率や健康寿命が長いことを示すデータは多数出ていることを述べつつも、要介護高齢者に限定した多数歯は唾液中の細菌数の増加に影響を与えることを示すデータを供覧。「歯が多く残った状態で口腔ケアが行えなくなることは、誤嚥性肺炎を誘発させるリスク因子となる。歯はどこかのタイミングで見切りをつける必要がある」と述べ、後期高齢者を中心に外来の時から訪問歯科での対応を想定した口腔状態を意識する必要性を解説した。そして、「枕もと(訪問歯科)での対応になるまで治療を先のばしにすることは患者さんのためにならない。『疾患リスクとなりうる歯は抜歯も必要な治療』」と歯を残すことが必ずしも最善策でないことを訴えた。

 最後の質疑応答では、参加者が臨床で感じている課題や疑問が多数寄せられ、菊谷氏がていねいに解説。なかでも訪問診療で対応が難しいケースについては、「環境や自身の力量で治療方針を決定するのではなく、必要に応じて治療が行える環境を紹介するなど患者に対して最適な治療を提案してほしい」とのメッセージが送られた。

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