2022年10月23日掲載

2年間の中断期間を経て約70名が参集

第8回3Dアカデミー・情報交換会開催

第8回3Dアカデミー・情報交換会開催
 さる10月23日(日)、ビジョンセンター浜松町(東京都)において、第8回3Dアカデミー・情報交換会(千葉豊和会長)が開催され、全国から約70名が参集した。3Dアカデミー(旧3D研究会)は、口腔内スキャナによるデジタル印象をはじめとした歯科治療全般におけるデジタル技術を研究・追求し、印象採得から補綴装置装着までの完全なるデジタルワークフローを推進することにより、歯科医師および歯科技工士の労働環境の改善と国民の口腔健康に寄与していくことを目的として2014年に発足したスタディグループであり、現在ではその他各種歯科治療におけるデジタルワークフローについて広く研鑽していく会として活動している。今回はコロナ禍による2年間の中断期間を経て第8回目の学術研究・情報交換会が開催された。当日の演題・演者および概要を以下に示す。

1)「とことんIOS」出版記念講演会(窪田 努氏、京都府開業/片野 潤氏、モリタMDSC)
 2021年に小社から出版された『とことんIOS』を記念した講演。最初に登壇した窪田氏は、同書の内容および「ザ・クインテッセンス2022年3月号」で掲載された記事の内容を基に、3回のスキャンで口腔内写真や規格模型のような規格性のあるスキャン画像を採得することが可能な3 Framework Scanを紹介し、その際の口腔内スキャナーの動かし方をわかりやすい画像と動画で解説した。続けて登壇した片野氏は、日本でも今年から販売が開始された3ShapeのImplant Studioを用いて、インプラント治療における歯科医師と歯科技工士のコミュニケーションの重要性と注意点について解説した。

2)「モノリシックで活かす!ジルコニア・レストレーションの現在」、「口腔内スキャナーの臨床」、「デジタル・モノリシック・インプラントレストレーション」出版記念講演会(福徳暁宏氏/深澤翔太氏、ともに岩手医科大歯学部補綴インプラント学講座/千葉氏、北海道開業/夏堀礼二氏、青森県開業/山下恒彦氏、デンテックインターナショナル)
 2021年にヒョーロン・パブリッシャーズ社から出版された『モノリシックで活かす! ジルコニア・レストレーションの現在』および『口腔内スキャナーの臨床』、2020年に小社から出版された『デジタル・モノリシック・インプラントレストレーション』を記念した講演。最初に登壇した福徳氏は大臼歯にモノリシックジルコニアが装着されて天然歯が対合の場合に、モノリシックジルコニア自身の摩耗と対合する天然歯の摩耗が、ハイブリッドレジンが天然歯と対合する場合と比較してどのように異なるのかを紹介した。深澤氏はスキャンパウダーが必須ではない口腔内スキャナーにおいても、実験の結果からスキャンパウダーを適切に使用することでスムーズかつ正確に口腔内スキャンが行える可能性があることを示唆した。千葉氏はフェイススキャンデータやDICOMデータを口腔内スキャンデータとマッチングさせることが診断や患者説明においても有利にはたらくと解説した。夏堀氏は自院がデジタル化によって何が変わったのかを紹介し、そのなかでプロビジョナルレストレーションでの調整および、それをデータ化して最終補綴装置に正確に反映させることを重要視していると述べた。最後に登壇した山下氏は、ジルコニアディスクについて材料学の観点から解説しつつ、自社で開発したジルコニアディスクであるZivinoの優位性を紹介した。

3)一般講演「一般臨床に応用されるデジタルテクノロジーの更なる進化」(秋山和則氏、デンテックインターナショナル/橋本裕紀氏、E-joint/渡辺理平氏、青森県勤務)
 最初に登壇した秋山氏は、口腔内スキャンデータ・フェイススキャンデータ・DICOMデータを組み合わせたデジタルデンチャーの製作法を紹介した。次に登壇した橋本氏は、同社の藤川 知氏と夏堀氏らとの共著で「QDT2022年9月号」に掲載された口腔内スキャンデータから模型を製作する際の独自のシステムを紹介した。最後に登壇した渡辺氏は、2年前にライセンスを習得したというインビザラインGo(インビザライン・ジャパン)で治療を行った複数のケースを紹介し、その有用性を解説した。

4)教育講演(松岡伸也氏、埼玉県開業/嘉ノ海龍三氏、兵庫県開業/宮崎恵子氏、デンテックインターナショナル)
 最初に登壇した松岡氏は、アライナー矯正において勘違いされやすい項目を挙げつつ、アライナー矯正において重要な項目や、アライナー矯正とマルチブラケット矯正の違いについて解説した。次に登壇した嘉ノ海氏は、不正咬合には顎骨・歯列・顎機能の不調和などの原因があるとして、矯正歯科治療によって単に歯列を整えるだけではなく、それらの原因を根本から解決することが長期的な健康維持に繋がると述べた。最後に登壇した宮崎氏は、インプラント上部構造におけるアバットメント選択のポイントについて述べ、同社が開発した3on1 Ti baseの優位性について解説した。

 診断から補綴、アライナー矯正まで、多くの演者が登壇し、さまざまなテーマで講演が行われた。まさに「各種歯科治療におけるデジタルワークフローについて広く研鑽していく」という同会の趣旨どおりの情報交換会となった。今後も歯科界のデジタル化は進んでいくなかで、同会のようなさまざまな視点からの情報を得られる機会は参加者にとってさらに有用になっていくのではないかと思われる。

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