2023年5月22日掲載

「オルソインプラントセラピーの実践」をテーマに講演

クインテッセンス出版株式会社、第38回WEBINARを開催

クインテッセンス出版株式会社、第38回WEBINARを開催
 さる5月22日(月)、丹野 努氏(栃木県開業)によるWEBINAR#38「オルソインプラントセラピーの実践」(クインテッセンス出版主催、北峯康充代表取締役社長)が開催された。本セミナーは、丹野氏の著作である『オルソインプラントセラピー』の内容をベースに行われた。

 冒頭、丹野氏は書籍のタイトルにも採用されたオルソインプラントセラピーの語源について解説。丹野氏が実践する矯正(Orthodontic)とインプラント(Implant)の両方を併用する治療(Therapy)方法の造語としてOrtho Implant Therapyと名付けられたことが説明された。また、両分野における専門医の質の高い治療を受けることのメリットを挙げた一方、ひとりのドクターが一貫して治療を行うことで治療の全体像を見通しやすいといった強みとともに低侵襲の術式が求められる昨今の風潮に対し、「低侵襲な治療を選択したことで治療の結果が劣ることがあってはならない」とのオルソインプラントセラピーを行ううえでの概念と主義を述べた。

 次に、インプラント治療の基礎に言及し、なかでも丹野氏が骨造成を必要とする際におもに用いているGBR法(骨再生誘導法)と、治療を成功に導くために重要な組織の再生について解説。インプラント埋入に十分な骨量を再生させるための足場、成長因子、細胞、血管の4つの重要因子を挙げつつ、チタンメッシュを利用した手法やインプラント補綴の最適な埋入角度について詳説した。

 続いて、矯正治療の基礎について解説した。特に矯正治療を行ううえでセファロ分析から下顎骨の位置や咬合平面の傾斜などの収集すべき情報のポイントを挙げ、Angleの不正咬合分類とAndrewsの正常咬合の6つの鍵の考えをベースにしたアプローチ手法など、症例とともに供覧した。そして矯正治療の目指すゴールには、口腔の機能と形態の調和を図ることによる患者のQOLの向上を挙げた。

 その後は、インプラント治療と矯正治療併用、つまりオルソインプラントセラピーのポイントを解説。まず、矯正治療をはじめる前に適切なプラークコントロールを行い、歯周組織が良好な状態を確保することの重要性に言及した。また、インプラント埋入の適正時期(矯正前・中・後)を検討するにあたり、それぞれのタイミングにおけるメリットについて説明。矯正治療前にインプラントを埋入するメリットには、治療早期のバーティカルストップ獲得が容易であること、矯正中では埋入ポジションリカバリーのしやすさを挙げた。そして治療後には、理想的なポジションに埋入できることをアピールし、口腔内の状況に応じた判断基準を示した。なお、便宜抜歯と智歯の抜歯については、矯正前か矯正初期の抜歯を推奨した。

 講演後の質疑応答では、「インプラントと矯正の異なる治療分野を複合させた治療を実践するにあたり、どのように学びを深めていけばよいのか」との質問が寄せられ、丹野氏は「まずは、書籍やセミナーなどを活用して矯正治療の知識を深めること。そして自身が治療できる症例パターンを定めて、経験を積みながら徐々に対応できる領域を広げてもらいたい」と回答した。

 なお、次回のWEBINAR#39は、きたる7月5日(水)、川名部 大氏、清水宏康氏(ともに東京都開業)を招聘し、「根分岐部病変に対する歯周組織再生療法のストラテジー」が開催予定である。申込みはこちらから。

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