目次
特集:自家骨移植をともなわない上顎洞底挙上術
1.スペースの確保
ポリ乳酸プレートを用いたサイナスリフトの臨床応用
澤 裕一郎
インプラント治療に関する骨造成法の多くは骨移植によるもので,リモデリングにより母床骨へ置換されていく.サイナスリフトも骨移植による骨造成法と考えられていたが,最近では剥離挙上した洞粘膜下に自発的骨形成を生じることが判明している.本論文ではポリ乳酸製吸収性プレートによる洞粘膜挙上の維持とPRP を充填したサイナスリフトにおいて良好な結果が得られたので報告する.
2.培養骨の応用
培養骨を用いた歯槽骨再生の臨床応用
朝比奈 泉,各務秀明
近年,培養骨を用いた歯槽骨の再生が期待され,いくつかの臨床研究が報告されているが,その方法は確立されるには至っていない.われわれも自己骨髄由来骨芽細胞様細胞,β TCP 顆粒,多血小板血漿による培養骨を用いた歯槽骨再生法の検討を行い,比較的良好な結果を得ることができたので,その内容と問題点について紹介する.
シリーズ:矯正治療におけるスケルタルアンカレッジ
5.インプラントアンカーの応用
インプラントアンカーの安定性と様々な臨床応用
宮脇正一,飯野祥一朗,平良幸治,窪田健司
最近,チタンスクリュー等を絶対固定源として用いる矯正歯科治療,いわゆるインプラント矯正が,多くの医療機関で行われつつある.その結果,治療精度等が向上してきた反面,トラブルなどが生じる危険性もある.本論文では,まず,インプラントアンカーの安定性と臨床応用について,これまでわれわれが行ってきた臨床や研究の成果に基づいて記す.次に,インプラントアンカーの脱落率や植立時の注意点および様々な臨床応用に関して,他の臨床家らによって報告された最新の知見等についても紹介する.
シリーズ:摂食・嚥下
5.誤嚥性肺炎
摂食・嚥下障害と誤嚥性肺炎
勝田芙紗,平岡 崇,椿原彰夫
高齢者の肺炎はそのほとんどが不顕性誤嚥による肺炎であるといわれている.抗菌薬の開発の進歩にもかかわらず,高齢者の肺炎による死亡率は減少しておらず,誤嚥性肺炎は高齢化社会を迎え大きな問題となっている.体力・栄養状態・口腔衛生を良好な状態に保つことは予防対策の基本であり,近年では薬物療法による肺炎予防も検討されている.誤嚥性肺炎の治療には多職種が関わるチームでの包括的なアプローチが不可欠である.
特別シリーズ:研修歯科医は何を学ぶか
10.高頻度治療(2)
高頻度治療(2)-管理型臨床研修施設における初期の研修-
宇野清博
新歯科医師臨床研修制度における基本習熟コース「高頻度治療」には,五つの行動目標が提示されている.これらの目標に到達するため,主に管理型臨床研修施設で行われると思われる初期の研修(研修開始から3~4か月)で,研修歯科医は何をどのように学ぶかを考察,提示する.
11.医療管理
医療管理-歯科医療のマネージメントを指導する-
平田創一郎
平成18 年度に必修化された新歯科医師臨床研修制度における到達目標のうち,医療管理の項目には臨床以外の研修が多く含まれている.新歯科医師臨床研修はon-the-job トレーニングであると位置づけられており,研修歯科医は日々の臨床から学ぶこととなるが,それと隣接した医療管理も同時に身につけていかなければならない.そこで,基本習熟コースの「医療管理・地域医療」ユニットおよび基本習得コースの「医療管理」ユニットに提示されている行動目標SBOs について,より具体的な内容を検討する.
歯周病の薬物療法
歯周病における抗菌薬治療の実際
藤井健男,辻 ひふみ
歯周治療の薬物療法についての考え方とその変遷を,主に抗菌薬治療に焦点を当てて解説し,侵襲性歯周炎治療における全身投与による抗菌薬治療についての臨床研究を報告する.本稿では,侵襲性歯周炎治療において,的確な歯周基本治療とともに行われるマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)投与は,短い治療期間で効果の高い治療成果をもたらすことを臨床研究に基づき紹介する.
歯周病原細菌の伝播
歯周病原細菌の親から子への伝播について
梅田 誠
小児では乳歯列から永久歯列への歯の交換期に親から子への歯周病原細菌伝播のリスクが高まる.この時期の親から子への歯周病原細菌伝播の予防は,将来の歯周病発症を防ぎ,歯周病が関係する糖尿病,心血管疾患,妊婦の低体重時出産などの全身疾患に対するリスクを減らすことにつながるであろう.
覆髄材プロルートMTA
歯科用覆髄材「プロルートMTA」の適応と有効性
細矢哲康
1993 年に米国で開発されたMTA(Mineral Trioxide Aggregate)が,覆髄材として「プロルートMTA」という名称で発売された.粉末を蒸留水で練和する水硬性セメントであり,エックス線不透過性を有し,ケイ酸セメントに分類される.多くの研究で優れた生体適合性が証明され,良好な臨床成績も報告されている.さらに,2000 年にはADA(米国歯科医師会)から歯内療法領域でもっとも信頼のおける材料との評価を受けた.
翻訳論文
根管内破折ファイルの除去
新破折器具除去システムを用いて根管内破折ファイルの除去を行ったケースレポート
寺内吉継,Le O'Leary,須田英明
ブラキシズムのメカニズム
ヒト顎関節滑膜細胞の圧縮負荷に対する応答
室井悠里,覚道健治,中田 研
インプラント表面の改変(HA薄膜)
分子プレカーサー法で作製した炭酸含有アパタイト薄膜チタンインプラントの海綿骨適合性
早川 徹,高橋健一,吉成正雄,岡田裕之,山本浩嗣,佐藤光史,根本君也
TOPICS
がん治療と口腔ケア
がん治療における口腔ケアの意義と歯科の役割
大田洋二郎
歯根吸収
乳歯象牙質は永久歯象牙質より破骨細胞に吸収されやすい
Bobby John Varghese