目次
特集:OSAS
1.OSASの歯科的治療
OSASの歯科的治療
小野卓史
今般の歯科診療報酬改定に伴い,これまでは医科的治療の対象であった一つの睡眠呼吸障害に対して,新たに歯科医師が関与することになった.本稿では,その疾患,すなわち睡眠時無呼吸症候群に関して,定義・診断・治療および今後の臨床研究の展開に関して解説する.
2.OAの下顎位
下顎前方移動装置における下顎位と長期予後
大塚 亮
口腔内装置(OA)の一種である下顎前方移動装置(MAA)を用いて閉塞型睡眠時無呼吸症候群を治療する際に問題となる,「どの程度の前方位を治療顎位とするか」について近年の知見を紹介する.ついで,MAAの長期使用後に生じる咬合や歯列の変化,さらには治療効果の変化についての報告を紹介する.
3.OSAS治療用口腔内装置の臨床
OSAS治療用口腔内装置の臨床
佐藤光生,棚橋孝之,近藤知里,高島明子,高橋 啓,中村周平,田村梨沙,礪波健一,俣木志朗,黒崎紀正,長谷川誠
閉塞型睡眠時無呼吸症候群における口腔内装置治療についての要点・問題点を取り上げ,その治療効果と副作用への対応について述べる.また,その中で下顎前方移動量の異なる2種類の口腔内装置を作成し,それらの治療効果と自覚症状の評価を行った臨床研究を紹介する.
4.日本人患者の特徴
日本人OSAS患者の解剖学的特徴
大久保麻卯,鈴木雅明,山本照子
アジア人OSAS患者は肥満の程度が低くても,重度OSAS 患者が多い.その原因として,顎顔面形態に問題があると推測する.本稿では,日本人OSAS患者の3次元的な顎顔面形態の解剖学的特徴を解析し,人種によるOSAS発症のリスクファクターの違いを考察した.
シリーズ:摂食・嚥下
6.歯科医が行うリハ
歯科医が行う摂食・嚥下リハビリテーション
渡邊 裕,枝広あや子,山根源之
地域・在宅における摂食・嚥下リハビリテーションの中心的役割は歯科医師が担うのが適当と考える.なぜなら歯科がこれに必要な資源と知識と技術を有しているからである.最期までQOLや生命の尊厳を維持するには呼吸,会話,摂食・嚥下といった機能を維持しなければならない.そこに歯科としての専門性を発揮できれば,歯科は終末期医療に貢献することができる.本稿では歯科の診療所ないし訪問診療において行う機会が多い,基本的な摂食機能訓練について解説する.
特別シリーズ:研修歯科医は何を学ぶか
12.医療管理・地域医療
医療管理と地域医療―歯科臨床研修医トレーニングプログラムの提示―
伊東隆利
地域医療(医療管理・地域医療ユニット)について,研修歯科医の学ぶべきこと,研修施設としての役割,指導歯科医の役割について概説する.このユニットは他の技術教育のユニットと違い,幅広い社会人としての知識,および医療人としての態度,心のあり方が問われるユニットで研修環境の設定が重要である.研修歯科医が自らの社会的役割と倫理観に目覚める格好のユニットであろう.
13.基本習熟コースの方略
適切な方略の選択
関本恒夫
基本習熟コースは,研修修了時に研修歯科医が独立して診療ができるようになることを最終目標としている.そのための方略の選択に際し,考えなければならない要素,スキルスラボの応用,OJT(On-the-Job Training),および指導歯科医にとって必要なコーチング技法について解説した.
歯科用コーンビームCT
歯科用コーンビームCTの特徴と臨床応用
関 健次,岡野友宏
X線画像の情報は,通常二次元である.三次元的な情報を得るためにはCTなどの装置を用いる必要がある.近年,歯科用コーンビームCT装置が開発され,歯科への応用が始まっている.本稿では,従来のCTと比較しながらコーンビームCTを概説し,有用と思われる代表的な症例を供覧する.
咀嚼運動の制御メカニズム
咀嚼運動の制御メカニズム
井上富雄
咀嚼運動はヒトが行う最も複雑な運動のひとつであるが,特に意識しなくても適切に遂行することができる.これは,脳が下位脳幹の咀嚼のパタンジェネレーターによって咀嚼の基本パターンを作り,さらに口腔の優れた感覚機能を用いて食物の性状を感知し,咀嚼運動を調節するためである.本稿はパタンジェネレーターと口腔感覚による咀嚼の制御機構を解説する.
歯周組織の再生療法
歯周組織再生療法の臨床研究の現況
川浪雅光,齋藤 彰,加藤 熈,菅谷 勉,
小田島朝臣,宮治裕史,齋藤恵美子
歯周組織再生療法は,いまだ多くの歯周病患者が恩恵を受けているとはいえない.それは現在行われている再生療法に種々の問題点があるためであり,今後,改良を加えたり,新しい再生法を開発することが必要である.本論文では,現在臨床応用が認められている再生療法と現在基礎研究から臨床研究へと進み,近い将来臨床応用の可能性の高い再生療法について述べる.
翻訳論文
漂白後のエナメル質に対する試作プライマーの接着強さ
新海航一,若木 卓,鈴木司郎,加藤喜郎
歯の再生
歯の再生-再生歯は再生臓器の第1号となりえるか?-
中原 貴,井出吉昭
TOPICS
後期高齢者
歯科医療から見た後期高齢者問題
石井拓男
研究倫理
研究ミスコンダクトとは-研究のまごころ-
佐々木啓一
総目次
編集後記