一般的診査(矯正)
- 【読み】
- いっぱんてきしんさ(きょうせい)
- 【英語】
- examination of general history
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【目的】成長過程、現症や心理的背景などのinternalなものと環境、栄養、習慣などのexternalなものとに分けられ、今後の成長、精神発育に及ぼす影響、治療に対する適正などを確認することを目的とする。
【診査法】
1.問診表(調査用紙)により診査
1)主訴
叢生、上顎前突、下顎前突、開咬などの歯列不正や、口もとでの外観などの形態に関するものが一般的であるが、これらに伴う発音の不明瞭さ、咀嚼能力の低下、歯周疾患や顎関節の疾患などの機能上や病的症状の訴えを併せもっていることもある。
【評価】成人の主訴改善に対する注文は、形態的、機能的あるいは病的症状にしても、概してきめが細かいことが多く、治療後のトラブルを避けるためにも、矯正治療の限界と可能性について治療計画の説明時に納得させるため、患者の主訴がなんであり、どの程度の改善が希望なのかを確認する。
2)動機(主訴に至るまでの経緯)dentofacial estheticsに対する精神的なものか、口腔、顎関節機能障害に関するものであるか診査する。
【評価】具体的に動機がはっきりしている機能障害などは、その方面の精密診査に移行すればよいが、dentofacial estheticsなどの精神的要素が大きいものは、その主要な動機をなす事柄を具体的にしなければならない。
2.問診
1)体質的問題
(1)発育および健康状態、一般既往歴、(2)家族歴、(3)特異体質・薬剤に対する反応、(4)不正咬合の経緯などについて全身ならびに口腔内の健康状態が矯正治療に耐えられるか、また通院に支障を来す疾患、矯正治療に耐えがたい歯および口腔内の環境などの状態を診査する。
【評価】
(1)一般既往歴
心・血圧系…Extおよび観血処置を行う場合の注射薬剤などの選択。
肝系…術者の感染の問題、精密検査による病名の特定。
血液系…術者の感染の配慮、精密検査による病名の特定。
(2)家族歴
問診によるうけ口(III級)、出っ歯(II級)などの親族内での出現は、患者の同skeletal patternの遺伝要因の高い発生率を示す。
患者の示す顎顔面部形態 skeletal pattern
うけロ…skeletal class 3
出っ歯…skeletal class 2
細面……dolico facial pattern
丸顔・四角顔……brachy facial pattern
また、家族内の他の人が以前に矯正治療を受けたかどうか、どのような治療をしたのかによって、そのケースの傾向を知ることができる。
……協力度、治療に対する適応性など
(3)特異体質
薬物異常反応は、内服薬、外用または注射によるものかを分類し、その名称が判明したものは、極力使用を避けるほか、同系列や他薬剤についても適応性試験を行う。
金属アレルギーについては、過去の金属性補綴物装着後に発疹などが認められた金属について、矯正治療器材から除外することと、同系列金属や他金属についてもパッチテストを行い精密検査することも必要である。
アレルギー性鼻炎、咽頭炎が認められたものは、上顎歯列狭窄や下顎遠心咬合を引き起こしている可能性がある。
(4)不正咬合の経緯
現在の不正咬合発症にいたる経緯を周囲環境の変化を含めて問診した結果。
【評価】
乳歯のころも反対咬合であった…skeletal mandibular protorusionの可能性有、しかし必ずしも永臼歯列に移行するとは限らない。
乳歯が早期に齲蝕などによりExt.された…大臼歯近心転移の可能性有、またそれによって引き起こされるディスクレパンシー、後期萌出歯の埋伏。
永久歯萌出が正しい順序で行われなかった…萌出部位不足、頬・舌側転位、近遠心転位歯、高・低位歯
乳歯晩期残存…後続歯の埋伏や異所萌出、後続歯歯根形成不全
悪習癖の存在:弄唇癖…上顎前歯唇側傾斜
下顎前歯舌側傾斜
弄舌癖…open bite 低位歯
弄指癖…open bite
口呼吸…上顎歯列狭窄、下顎遠心咬合
2)精神的問題
患者の動機およびその希望を問診し、その患者の精神的状態を的確に把握することは、治療の主要な部分を患者の協力に依存する矯正治療を進めるうえで非常に重要であり、その後のモチベーション、理解、協力を得るうえでも大変大きな影響を生ずる。
【評価】
・その意志がinternalなものかexternalなものか。
internal:患者本人が自分の不正状態を把握しており、その治療の必要性を自覚しているもので、比較的動機づけしやすい。
external:外部よりその状態、および治療の必要性について間接的に自覚または他覚させられたもので、動機づけはやや難しい。
・openであるかcloseであるか。
open:質問に対する応答、および感情の表現が自然に無理なく行え、術者との意志の疎通がスムーズに行えるものは、動機づけが行いやすい。
close:質問に対する応答が乏しく、感情の状態がつかみにくいものはまず、患者との意志の疎通のルートを捜す必要がある。
・grobalであるかrestrictedであるか.
grobal:ある事物を包括的に全体のなかからとらえられるものでは比較的動機づけは容易である。
restricted:ある事物の状態に極端にとらわれたり、他との関係との重要度・優先性のバランスを欠くものの動機づけは難しい。
3)環境的問題
(1)保護者の治療に対する協力度
保護者、家族の協力性は、実際に両親、兄弟に直接面識することによってそれぞれの理解度、協力性を診査する。
【評価】当然、多くの家族の人の理解があることがプラスに働くことになるが、若年時、幼年時において年が近接している兄弟の影響は大きく、その反響がマイナスの影響を与えないように、注意しなければならない。
(2)学校、職場、友人との関係
成長期の子どもについては、生活時間の量とその影響力を考えると学校、友人関係の把握が重要である。また成人においては、その多様な職場環境、職種が診査の対象となる。
【評価】その理解度が未知数であり、あるときは集団として働き、また多様な個人としても影響力を発揮する学校環境において術者が把握でき、また間接的にその状態を知ることができるのは患者の性格と反応である。
積極的な性格:反応が機敏であり、学校における反響や友達の反応も聞くことができ、動機づけが相乗効果を表わすこともある。
消極的な性格:会話量の少ないことが多い。注意深く観察することと、先生や親から状態を聞くことも必要。
・成人における職場環境と矯正治療との関係
審美性が問題となり得る:接客業(セールス、デパート店員)、モデル
発音不良が問題となり得る:バスガイド、教師、アナウンサー、歌手
疼痛が問題となり得る:パイロット、スチュワーデス、電車運転手